第13話
怪物が出没する夜になるまで、貴方は討伐の準備を念入りに行っていた。
短銃を部分ごとに分解し、油を差して潤滑を保ち、差した油を拭い取ってしまわぬよう慎重に、丁寧に組み上げていく。弾の数は六発、黒曜の神の加護を受けた黒色の洗礼弾だ。
黒曜の神の加護を受けたものは一部の例外もなく黒へと染め上げられ、その威力や性能を爆発的に高めることが確認されている。
つまるところ、手軽に扱える短銃ではあるが、その銃弾は通常のライフル弾よりもずっと強力な殺傷能力を有するということである。
貴方はそれを腰のベルトに収めると、主要武器の整備に取り掛かった。
貴方の愛用している主要武器は、二本の刃物から成り立っている。
刃身の横幅が広く、そして縦に長い、大型の鉈がその一つだ。
その重量は通常の鉈よりも十分に加重されているが、黒曜の神の加護を受けている断罪者にとっては片手で振るうに適当な程度である。刃身は縦に約一メートル、横に約十五センチの、厚みのある鋼鉄で出来ており、その刃部は艶消しを意図とした漆黒の色に染まった業物だ。
もう一つは、鋸剣と呼ばれる奇剣の一種がそうである。
その剣は鋸という文字が冠されている通りに、小型の刃が片身にびっしりと生え渡っている。しかも刃並びは二層構造になっていて、上下に交互に鋭利な刃が並び、断ち切るのではなく引いて刻んで削り取るといった用途を意図としている。
この鋸剣は、鉈で一息に断ち切れないほど丈夫で弾力を有するものに対し、裂傷を刻みつけることを主目的とした補助装置としての側面が大きい。ほんの僅かでも傷を刻むことができれば、その傷をさらに拡大させることが可能となるからだ。
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