第11話
「――これにて、今日の話は終わりとなります。皆様に、黒曜の神の加護とお導きがありますように……」
司祭による閉会の宣言によって、信仰者たちは教会から歩み去ってゆく。
中には礼拝室に残って仲の良い者同士で集まり、世間話をしていく者たちもあるが、それについては自由である。
教会の門扉は誰にでも開いており、信仰や人生に迷った者がいつでも訪れることができるように、というのが黒曜の掲げている理念であるからだ。
「では、君、下で報告を聞こうか」
司祭の言葉に従い、貴方は司祭の後ろについて礼拝室から奥へと向かう。
石畳の廊下を進み、地下への階段を下りてゆく。
階段を下りた先は、少し広めの空間となっている。
そこは怪物の襲撃から近隣の人々を護るためのシェルターにもなっていて、保存の利く食料や水、武器などが保管されている。
その空間の一部に懺悔室と呼ばれる隔離された小さな部屋がある。
そこは一般の人々の些細な愚痴や深刻な悩みなど、他人には話せない事柄を話せるように用意されたものだ。
使用するには事前予約が必要で、その予約の把握は黒曜の神と話者本人だけが知るものだとされている。
話者および話の情報は黒曜の神によって秘匿され、小部屋の使用時刻だけが司祭に告げられるとのことである。が、詳しいことは貴方も知ってはいない。
小部屋は格子状の衝立によって二分されており、片側には司祭が、一方には話者が入るようになっている。壁は多層からなる構造によって防音性を保てるようになっており、外にいる者が耳を澄ませていたとしても内容が聞かれる心配は無い。
貴方は小部屋に入って椅子に座り、格子を挟んで司祭と向き合った。
司祭は貴方に話があるとき、そして話を聞くときに、どんな些細な話題であっても、必ずこの懺悔室を用いている。
ゆえに貴方も外界から隔離されているこの小さな空間に慣れ、静かな心境で司祭に対して向き合うことができている。
自身の為した惨き断罪に対して、向き合うことができている。
「では、話して下さい」
落着きのある声音に導かれ、貴方は静かに昨日の討伐報告を述べていった。
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