第33話 オフ会終了

 ギルドに戻って、報告をした。


「はい。たしかに、【ホーンテッド・パレス】の攻略を確認しました。ありがとうございます。これで、街がオバケに脅かされる心配はないでしょう」


 ジャラジャラと、ボクの冒険者証に報酬が振り込まれる。


 いただいた報酬は、みんなで均等に山分けした。


「さて、お店に行くよー」


 トワさんのお店で、ドロップアイテムの加工を行うことに。


 自分の定位置だと言わんばかりに、すしおくんはお店のカウンターに鎮座する。

 すしおくんが座った途端、NPCやらお客さんやらが殺到した。まさに招き猫ではないか。大人気だね。

 

 さっそく、イチさんがゲットした【銅のかけら】と【サファイアの眼】を、トワさんが加工する。


「あと、銃も強化できるようになったよー」


 トワさんは鍛冶レベルが上がり、さらなる武器の加工が可能になったという。


「じゃあトワ、お願い」


 ベルさんは、自身の銃と手持ちの素材すべてをトワさんに託す。


「もらったアイテムは、それぞれで分担しよう」


 トワさんが加工をしている間に、イチさん先導で報酬のアイテムを分け合うことに。


 ボクは報酬のお金と、盾に魔除け効果をもたらす【退魔の十字】をもらう。


「こんないいもの、もらっていいんでしょうか?」


 第一、ボクは今回、なにもしていない。

 アイテムをもらっていい立場じゃ、ないんだけどな。

 

「構わない。ケント氏が陰ながら前衛として、我々を守ってくれていたのはわかっているなり。目立たないと思っていたら、おおまつがい」


 ちゃんと、イチさんはボクの動きを見てくれていたのか。


「そうよ。ことあるごとに前に出て、支えてくれていたのは知っていたわ。どうしてもビビちゃんのほうが目立つけど、だからってケントがいらないなんてのはありえないわ。ケントががんばっているから、ビビちゃんも自由に動き回れるんですから」


 ベルさんも、ボクの行動を評価してくれた。 

 

 ビビには、【古のロザリオ】が渡される。魔力を少しずつ回復する効果が、あるそうだ。おそらくこれで、火力にさらなる余裕が生まれるだろう。


 ボクがロザリオを首にかけてあげると、ビビはうれしそうに『にゃーん』と鳴いた。


「ホントに、うれしそうね」


 ベルさんが、幸せそうなビビにうっとりしている。


「ウチも、そっちがいいかなー」


 十字もロザリオも、それぞれ二人分あった。


 トワさんも、ボクと同様のアイテムを受け取る。


「では我々は、こちらを」


 遠距離攻撃型の二人は、【霊感スコープ】というアイテムを受け取った。対アンデッド効果ないアイテムでも、ダメージを与えられるようになる。


 ナインくんとホクサイくんは、【破邪の篭手】というアイテムを装備した。アンデッドがもたらす毒などのデバフを、受け付けない。 


「装備が完成したよー」


 銅のかけらは、イチさんの装備に変わった。【鎮魂のカギ】という、ミミックを撃退できるアイテムだ。宝箱探索の、要になるだろう。


 サファイアの眼は、【八方美人の杖】という杖に。

【スプリット・レイ】という、拡散攻撃魔法を撃てる。威力こそ本家より低いが、魔力を消耗しない。


「すばら。見事な手際である。感謝」


「ありがとー」


 イチさんが、トワさんの技術を称賛する。


「できたよー。【トールハンマー】って銃だよー」

 

 トワさんの手で、ベルさんの銃が【ハンドキャノン】という武器種に変わった。拳銃の、強化版である。連射はできなくなったけど、溜め撃ちができるために一撃が大きい。対ボス用の武器といえばいいかな。

 

 しかしこのトールハンマーは、拳銃モードとハンドキャノンモードとを切り替えられるのだ。普段の雑魚戦では拳銃で連射を、ボス戦でハンドキャノンで溜め撃ち、という具合である。


「ありがとう。すごい仕事をするのね」


「レベルが上がったからだよー。みんなのおかげだよー」


 トワさんが謙遜した。


「えっと、本来ならここからホーンテッド・パレスの原因となったヴァンパイアを倒すミッションがスタートする。だが、今回はもうお時間が来てしまった」


 外を見ると、すっかり暗くなっていた。まだ、夕方なのだが。

 やはり、冬が近い。


 ゲームを終えて、軽くお茶で一休みする。


 次回、今度はオンラインで落ち合うことにした。


「ボクはこの時間なら、半休ですね。ビビのごはんが済んだら、お昼からインできますよ」


「助かる。では、この日で」


 ボクたちは、次の待ち合わせを話し合う。


「では、本日のオフ会はここまでにするお。ありがとだおね」


「ごちそうさまでした。ありがとうございます」


 ボクは、ビビをボックス型のケージに入れる。


「じゃあねー」


 トワさんは、迎えの車に乗って帰っていった。これから、周辺の観光らしい。


「あの、ケントさん」


 さてボクも、と思っていたら、鈴音りんねさんがボクのそばにやってきた。


「なんでしょう?」


「いっしょに、帰りませんか?」


「あ、はい。そうですね」


 もう、外も暗い。女性一人では、犬を連れていても危ないだろう。


「あたしの家は、駅の近くなので、そこまで」


「はい。いっしょに帰りましょう」

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最強のVRMMOプレイヤーは、ウチの飼い猫でした ~ボクだけペットの言葉がわかる~ 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2

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