第32話 トラップ突破型ダンジョン
「おお、いいアイテムをゲトー」
イチさんが、ボクたちにドロップアイテムを見せる。
「さっきの石像からですか?」
「うむ。ノーマルドロップの【銅のかけら】と、レアアイテムの【サファイアの眼】であるぞ。どちらも素材アイテムだな」
聞けば、イチさんのアビリティは【パワーハンティング】というらしい。
ノーマルどころか、レアも確定でドロップするという。その代わり、経験値を得られない。また、敵一体につき一度しか発動しないという。
不便ではあるが、強力なアビリティだ。
「街に帰ったら、素材からアイテムを作るねー」
「たすかる」
ボクたちはエントランスを抜けて、二階に到着した。
しかし、上の階への道は、巨大な扉に阻まれている。
「このダンジョンは、トラップを突破することで抜けられるわ。特に強いボスとか、はいないの」
部屋に入ると、宝箱がズラリと並んでいた。
「宝箱の中に、上の階に続く通路のカギがあるそうよ」
しかし、盗賊のスキルを持つイチさんは、宝箱をことごとくスルーする。
「ここの宝箱は、ほとんどがトラップ込みの感じ」
この階にある宝箱は、いわゆる【ミミック】ばかりらしい。
当たりの宝箱もあるが、薬草などの安いアイテムしかなかった。
「どうやらここは、ハズレ部屋の方なり。他の場所を探したほうが、よさそうだが」
まだ部屋はたくさんある。探せば、いいアイテムがありそう。
だが、その目論見は見事にハズレた。
「どういうこと? 全部、ハズレの宝箱だわ」
「おかしいねー。なにか一つでも、レアアイテムがありそうなのにねー」
妙だ。
『
理不尽なことがあったとしても、それは仕様ではなくバグのせいだ。
けれども、宝箱の件はどうも仕様みたい。
「ミミックを倒すトラップってこと?」
ベルさんとナインくんが、身構える。
「だとしたら、任せてちょうだい……あれ? 見て、ケント。ビビちゃんが」
突然、ビビが宝箱のほうへ歩き出した。
「ん……ビビ、どうしたの?」
ビビが、ミミックらしき宝箱へと近づいていく。
「それはミミックである! 触ったら」
しかし、ビビは宝を開けようとしない。『にゃーん』と、宝箱をそっと赤いじゅうたんから壁へズラす。
「違いますね。ユニークスキルが発動したみたいです」
ボクは、ミミックの宝箱をすべて部屋の脇へどけた。さらに、レッドカーペットを取り払う。
じゅうたんをどけた床、ちょうどミミックがいた床に、ネコの足跡の模様が出現する。
「これがビビのユニークスキル、【ここ掘れニャンニャン】です」
ビビはスキルを発動すると、レアアイテムの場所が足跡として現れるのだ。
「なんと、宝は箱ではなく、置いている床のほうにあっただったとは」
ビビが、ネコの足跡の上にポンと座った。
グググ、と地面が揺れ始めて、何かが作動した気配が。
「左側から、作動音が聞こえた。まいろう」
「行きましょう」
ボクたちは、音のした方角へ急ぐ。
通路にあった扉に、ネコの通り道が開いていた。
「この扉は、みせかけだったのか」
ビビが、ネコの入口に入り込む。身体を半分だけ入れ込むと、すぐに戻ってきた。口に小さなカギをくわえて。
ネコがいなくても、誰かが手を入れたら手に入るみたい。
「これ、ユニークスキルがないと見つけられないである」
「ミミックを倒すと、ヒントが出るんでしょうね」
「かもしれない」
ボクたちは、最上階へと向かう。
「あそこに、尖った塔があるでしょ?」
ベルさんが、眼の前にある細長い塔を指差す。
塔のてっぺんには、教会で見るような釣り鐘が。
「あれを鳴らせば、この城が聖なる力を取り戻すそうよ」
だが尖塔までの道のりには、足場がまったくなかった。脇から壁を伝って進もうとしても、壁には火を吹く仕掛けが。これでは進めない。
「足場がないよ」
「任せて。ナイン、行くわよ」
ベルさんは躊躇なく、ナインくんと前進した。
「あっ。地面がちゃんとあるのか」
「そうよ。特殊なガラスでできた、足場みたい。ケント、あたしについてきて」
ボクとビビも、後を追う。その後ろから、トワさんとすしおくん、イチさんとホクサイくんがついてくる。
「コウモリが!」
コウモリとカラスが、襲ってきた。
数が多すぎて、ベルさんたちの射撃では追いつかない。
「任せてー。すしおー」
トワさんの合図で、すしおくんが範囲攻撃魔法を放つ。
カラスやコウモリが、地面へと落ちていった。
「ゴールよ! ケントお願い!」
「はい!」
ベルさんが道を切り開き、ボクは前に出る。
「ビビ、いっしょに鳴らそう! それ」
ボクはビビといっしょに、頂上の尖塔にたどり着く。釣り鐘を、勢いよく揺らした。
さっきまで悪霊だらけだったお城に、陽光が差し込んだ。
悪霊たちが、陽の光に照らされて消滅していく。
「ミッションをクリアしたわ!」
「足場も、ちゃんと見えるようになったぞ!」
ベルさんたちも、尖塔にたどり着く。
「この塔、エレベータになってますね」
帰りは、塔のエレベータで地上まで降りた。
これで、ミッション完了である。
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