第28話 究極でもない二択。
28話 究極でもない二択。
「僕に逆らうのであれば死ぬ。そういう首輪をつけているということを忘れたのか?」
「ジバをいただけないのであれば、俺はあなたに従わない。例え殺されても、俺は自分の意見をかえない。首輪で俺を殺したければ好きにすればいい。俺があなたに与える二択に変わりはない。さっき最後と言いましたが、かみ砕いた上で、もう一度だけ言いましょう」
そこで、センは大きく息を吸い、
グっと眼力に魂を込めて、
パルカを睨み、
「配下の中では、十七眷属ふくめ、確実に誰よりも優秀な俺に、『ジバと彼の妹』を与えて気持ち良く働かせるか、それとも、……俺を失うか。どっちですか?」
「……」
ピリピリとした空気がさらに、その重たい質量を増していく。
(センの覚悟は本物……狂ったような信念を感じる……こいつは、本当に、死んでも、意見を変えないだろう……こういう頑固な奴はたまにいる……ほとほと厄介……合理を無視して、意地だけを重んじる頑固者……厄介……)
パルカは考えた。
センエースにジバを与えることの懸念点。
センエースをうしなうことによる問題点。
(厄介で面倒……それは事実だが……センエースが優秀な魔人であることも事実。この男を棄てるのは明らかに悪手……)
色々と、散々、考えた果てに、
「……いいだろう」
パルカは折れた。
龍神族が一般人に折れるなど、本来であればありえない話だが、
しかし、流石にセンエースだけは別。
オンドリューを倒せるほどの強者である最凶のテロリスト『カドヒト・イッツガイ』を撃退できるだけの実力者。
それだけの強者を失うのは流石に愚策がすぎる。
それほどの強者に、ジバという強力な魔人を与えるのは、正直、かなりの問題なのだが、
しかし、
(センには首輪をつけてある……もし、万が一、反旗を翻したとしても……僕の意志一つですぐに殺せる……ゆえに、最悪の事態にはならない……)
その絶対的な保険があるからこそ、
臆病で慎重なパルカは決断ができた。
それがなければ、もっと悩んでいただろう。
「オンドリューの配下の……その『何とかって魔人』を……君の下につける。今日から、その魔人は、君の所有物だ」
「ジバだけではなく、彼の妹も俺の下につけると約束してくれますか? そこ、俺的にはかなり大事なんで。そこそこ、いい女らしいんで、そっちも欲しいんですよ。強力な兵隊と、いい女。この二つがセットってところがミソなんで。その辺、全部がそろっていて初めて報酬になる。そう認識してもらいたい」
(ジバの妹……確か、『ジバを働かせるための楔』としての役割しかないはず……見た目はそこそこだが、それ以外に大した価値はない……はず……ならば、なんの問題もない)
その女をわたすことは、パルカ的に、なんの問題もない……が、実際に問題があるかどうかは関係なく、パルカは、
「……オンドリューの配下は、魔人10人分に匹敵する……それにプラスして、良質な女の魔人も……ふむ……君は、かなり強欲だな。どう考えても、ボーナスの域を超えているが……まあいいだろう。ただし、これは、君に対する期待と信頼と誠意の表れだと思ってもらいたい」
すべてをカードにしていくパルカ。
どうでもいいものすら、大事なものに見せかけて、少しでも有利をとっていく。
そういう抜け目のなさ、ある意味での貪欲さ、繊細な堅実さが、彼の強みでもある。
「私は、君に対して、誠意を示した。明らかに過剰すぎるボーナスを与えた。私の期待に……誠意に……君がどう応えてくれるのか、楽しみにしている。もし、今後も、私の誠意にたいし、まっこうから向き合ってくれるのであれば……君の強欲な要求に応え続けよう」
「ありがとうございます、パルカ様。あなたは、俺との約束を守ってくれた。ちゃんと、俺が望む報酬を与えてくれた。……今後も、あなた様に忠誠を誓い、どんなミッションでも、決死の覚悟で向かうと約束しましょう」
「……いい覚悟だ。その信念を忘れないように」
「ははーっ」
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