第26話 申し訳ありません、オンドリュー様。
「いやぁ、しかし、ほんと、こいつは、大変だ! だが、俺は頑張る! 歯を食いしばって、この困難に打ち勝つ! さあ、いくぞ! カドヒト・イッツガイ! 俺の魂を受け止めろ!」
と、演技がかったセリフを叫びながら、
センは、カドヒトに殴り掛かる。
センの攻撃を、するりとかわしながら、
「センエース! 龍神族ではなく、私の下につけ! 貴様と私が手を組んで、全ての魔人を指揮すれば、この世の中を変えることができる! オンドリューのようなクソを一掃できる!」
「黙れ、テロリストめ! 暴力による革命などあってはいけないんだ! 何がどうとは言えないが、とにかく、革命はやっちゃいけないんだ! どんなに苦しくても、庶民は、上級国民のために我慢する! それがこの世界の在り方なんだ! そんな前提がなくとも、俺は、龍神族と、十七眷属の犬! 犬は主人のために吠えるのみ!」
「目覚めろ、センエース! 下らない洗脳から解きはなたれろ! 勝手極まりない支配という呪縛を殺せ! お前はお前のままで生きていける! 誰の支配も受けずに生きていけるんだ! あとは踏み出す勇気だけだ!」
チラっと、ジバに視線を送りながら、
そんな言葉を叫び続けるカドヒト。
そんな時間を、ある程度、重ねた果てに、
両者、ボロボロになっていく。
「はぁ……はぁ……」
「はぁ……はぁ……」
血だらけの二人は、距離をはかりながらにらみ合う。
そんな、隙間の時間に、
カドヒトが、センの目をジっと見つめて、
「ほ、本当に、強いな、センエース! それだけの力をなくすのは惜しい! 無駄に死ぬ必要はない! 私とともに、上級国民と戦え」
「俺は上級国民の犬だ……その立場が変わることはない。現場の主人であるオンドリュー様を守るために戦い続ける!」
と、中身のない言葉を叫びながら、
センは、カドヒトの顔面に一発を叩き込む。
かなり質の高い一発をもらったカドヒトは、吹っ飛んで、壁に激突し、
「ぶはぁああああっ!」
と、盛大かつ豪快に血を吐くと、
「っぐっ……センエース……今回のところは、引き下がっておく……しかし、俺は貴様を諦めないぞ……必ず、貴様を、俺の配下にして、この世界の支配構造を破壊する!」
「ナメるなよ、カドヒト。俺は、龍神族と十七眷属を裏切らない! 俺は、永遠に、上級国民の犬で在り続ける! なぜなら、俺は、常に強いやつの味方だから!」
「……目をさませ、センエース……」
その言葉を最後に、
カドヒトは、その場から転移で逃げ去った。
ボロボロの、センは、フラっとその場に倒れて、
「も、申し訳ありません、オンドリュー様……追いかけたいところですが……もう体力が残っておりません……カドヒトは本当に強いバケモノでした……くっそぉ……俺にもっと力があればぁ……くっそぉ(棒 )」
そう言いながら、
センは、オンドリューに、回復魔法をかけていく。
センの魔法で、最低限、喋れるようになったオンドリューは、
「……」
数秒ほどだまり、その時間の中で、いくつかを考えてから、
センに、
「…………よくやった……よく、あのカドヒトをあそこまで追い詰めた……そこに関しては褒めてやる……ただ、仕留めきれなかったことは……失態だ……罰は受けて……もらうぞ」
と、プライドをむき出しにしてくる彼に、
センは、
「ははー、申し訳ありません!」
と、頭をさげる。
……こうして、センの最初のミッション『カドヒトを撃退せよ』は幕を閉じた。
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