第22話 センエース、探偵さ。
「はははっ! ほんと、ワラかすじゃないか。ヘソで沸いた茶が蒸発する。……誰がお前を助けるんだよ。自分が『助けられるに値する』と本気で思うか? 助けられる側に立てると本気で思うか? その運命にありつけると、本気で……思うのか? あん?」
「……ぅ……ぅう……」
「あれ? もしかして、泣いてる? うわ、びっくり。自分にその権利があると思っていることにびっくり。赤い血が流れているだけでもびっくりなのに」
そう言いながら、カドヒトは、
配下Bの頭を踏みつけて、
「てめぇには涙を流す権利などねぇ。……覚悟しろよ、クズ野郎。ここにいる全員に、徹底した痛みを理解させるからな」
と、宣言したところで、
それまで、ずっと黙って状況を見守っていた魔人『センエース』が、
スっと、前に出て、
「救いのヒーロー、参上」
と、初代仮面ラ〇ダーのポーズをとりながら、そう言った。
「……なんだ、お前」
と、カドヒトに問われたセンは、
「センエース、探偵さ」
と、いつもの病気で答える。
そんなセンに、カドヒトは、怪訝な顔で、
「……お前、魔人だろ?」
「ああ」
「おまけに、そうとう強いな」
「ああ。お前より強い」
「それはない……が、まあ、そんなことは今どうでもいい。それよりも、お前、なんで、こいつらを救おうとする?」
「そういう契約だから。俺は『与えられた仕事をキッチリとこなすタイプ』でね。とはいえ、出来ないことはしない。この辺の線引きは非常に大事」
「……」
「ここまでの動きを観察させてもらった結果、俺は『お前よりも強い』ということが判明した。なので、ここからは、契約にのっとり、仕事を果たさせてもらう。十七眷属の一人
オンドリュー将軍と、その配下たちを守り、邪教団ゼノの総帥カドヒト・イッツガイを撃
滅する。ミッション了解。……センエース、目標を駆逐する」
そう言いながら、
センは、グンッッ! と踏み込み、カドヒトに向かって、握りしめた拳を突き出した。
その拳を、ギリギリのところで回避するカドヒト。
「ぐっ」
イカれた拳の速さに瞠目するカドヒトに、
センは、
「カドヒト。お前は強いが、少々あらいな。俺の相手ができるレベルじゃねぇ。自分の未熟さを嘆きながら、あの世に旅立ちな」
そう言いながら、センは、追撃の拳を叩き込もうとする。
が、そこで、
「くそがぁああ! 武装闘気ぃいいい!!」
カドヒトが、『全てのステータスを上昇させる高位魔法』を使った。
『強力な性能を誇るオーラの鎧』を身に纏うF魔法。
いわゆる『変身系』と言われる魔法。
※ フリ〇ザ様のように肉体が変質するタイプのものもあれば、仮面ラ〇ダーのようにスーツや鎧を着込むタイプもある。武装闘気は、後者タイプの変身系。
「センエース! 貴様の実力、龍神族に匹敵するな! 素晴らしいぞ!」
そう言いながら、武装闘気カドヒトは、
握りしめた拳を、センに向かって突き出した。
先ほどのセンの拳とそう変わらない火力。
センは、ギリギリのところで、それを回避しつつ、
(……ちゃんと、それなりの修羅場をくぐってきたようだ……閃拳の練度が、そこそこ増している……)
自分のオーラドールである『カドヒト』の拳を吟味していく。
カドヒトの、
「おらおらおらぁ!」
連打を、軽やかに回避しつつ、
センは、
「……閃拳」
カウンター気味に閃拳を合わせた。
「うおっ!」
ギリギリのスウェーでどうにかそれを回避するカドヒト。
それを見て、センはほくそ笑みつつ、心の中で、
(回避の動きもキレてる……いいねぇ)
と、まるで育て屋さんに預けていたポケ〇ンを確認するように、オーラドールの成長を喜ぶ。
……数分かけての戦闘。
センとカドヒト。
互角に見えている両者の武。
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