第11話 最初のミッション。


(もし、センが反旗を翻したら……その時は……首を絞めて殺せばいい。セーフティの機能に問題はない……)



 『センエースの問題』には、『絶対にどうにかなる首輪(セーフティー)』がかかっている。

 そう思うと安心できた。

 保険があると安心できる。


 心のどこかでは、『こいつの狂気を、首輪一つで抑えることなど出来ないのではないだろうか?』……と勘ぐってしまう部分があったりもするが、『そんなものは疑心暗鬼でしかない』と切り捨てて、前に進もうとするパルカ。

 ゆえに、


「……まあ、いいだろう。こちらの仕事を完璧にこなしてくれるのであれば、僕としては何も言う気はない」


 と、センの全てを了承していく。

 パルカにとって、『センの全てを承諾したこと』が、

 吉と出るか凶と出るか……

 それは、これからのパルカしだい。

 パルカは、これから、センを査定する気でいるが、

 実際のところ、

 これから、『査定されていく』のはパルカの方。

 はたして、パルカは、全てのミッションが終わった時に生きているのか……


「それでは、最初のミッションを与える。僕の直属配下、十七眷属の一人、『オンドリュー』が、独自の調査を行った結果、『ゼノのアジトの一つ』と思しき場所を発見した。今夜、奇襲をかける予定なのだが、それに参加してもらいたい」


「おおせのままに」


 そう言って、センはしっかりと頭を下げた。





 パルカの部屋から出たところで、

 クロッカからの『通信の魔法』がセンの脳内に届く。

 『すぐにクロッカの部屋に来るように』というメッセージに対し、センは、


「おおせのままに」


 四方八方にシッポを振っていくスタイルをつらぬく。

 『小物』を演じることに何の抵抗もないセン。

 特殊なプライドは激烈に高いのだが、こういう場面でのプライドは皆無な閃光。

 奥深い変態キチガイ……それが、彼、センエース。

 ……転移の魔法で、クロッカの部屋の前に飛ぶと、

 センは、最低限の身なりを整えてから、ドアをノックする。

 『入れ』という短い命令に従い、センは、クロッカの自室に足を踏み入れた。


(……質素だねぇ……俺的には高得点だが、貴族としては0点じゃね?)


 クロッカの自室は、パルカの自室と違い、豪華な調度品などは一切なかった。

 女子らしさなど皆無。

 『高次の断捨離でもしてんのか』ってぐらい殺風景。

 クロッカは、イスに腰かけて、大きな窓の外を眺めていた。

 センが自室に入ってからも、5秒ほどは黙って、自身の背中だけを魅せつけた。

 そんな、『明らかな含み』のある『無言の時間』が数秒過ぎたところで、

 クロッカは、ノールックのまま、


「座りなさい」


 そう命令してきた。

 センは、御言葉に甘えて、近くのソファーにドカっと腰をおろす。

 クロッカは、『威圧的なノールック』のまま、背中で語る。


「それで? 詳細を聞かせてもらえる? うまく、お兄様の懐にもぐりこめた?」


「ええ、まあ」


「分かっていると思うけれど、一応言っておくわ。……あなたは私の剣。いずれは、お兄様とお父様の首を狩ってもらう。……なんだったら、おじい様も曽祖父様(ひいじいさま)も、まとめて、私以外の龍神族を皆殺しにしてもらう……その大前提、わかっているわよね?」


「もちろんですとも、お嬢様。俺はあなたの剣」


「……いいわ。で? 詳細は? お兄様と、あなたの間で、どういう話し合いが行われたの?」


 そこで、クロッカは、ようやく、

 威圧的なノールックを解除して、

 センの方に、強い視線を向けた。

 ……と、そこで、ようやくクロッカは気づく。

 センの首に、『首輪』がかけられていること。


「っっ?! あなた、その首輪!!」


「ん? ああ、オシャレでしょう? 俺としては、『もっと腕にシルバーまくとかした方がいいかなぁ』とも思うんですけど、今の俺の『男度』では、この程度が精々だろうと、ガイアがささやくので……」


 などと、何言っているかさっぱり分からない戯言をほざくセンに、

 クロッカが、目を血走らせて、


「どうして、その首輪をつけたの!!」


 と、ブチギレてきた。

 センは、耳をふさいで『やかましい』のポーズをとりつつ、


「そこに首輪があったから……とでも申しましょうか」


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