第11話 最初のミッション。
(もし、センが反旗を翻したら……その時は……首を絞めて殺せばいい。セーフティの機能に問題はない……)
『センエースの問題』には、『絶対にどうにかなる首輪(セーフティー)』がかかっている。
そう思うと安心できた。
保険があると安心できる。
心のどこかでは、『こいつの狂気を、首輪一つで抑えることなど出来ないのではないだろうか?』……と勘ぐってしまう部分があったりもするが、『そんなものは疑心暗鬼でしかない』と切り捨てて、前に進もうとするパルカ。
ゆえに、
「……まあ、いいだろう。こちらの仕事を完璧にこなしてくれるのであれば、僕としては何も言う気はない」
と、センの全てを了承していく。
パルカにとって、『センの全てを承諾したこと』が、
吉と出るか凶と出るか……
それは、これからのパルカしだい。
パルカは、これから、センを査定する気でいるが、
実際のところ、
これから、『査定されていく』のはパルカの方。
はたして、パルカは、全てのミッションが終わった時に生きているのか……
「それでは、最初のミッションを与える。僕の直属配下、十七眷属の一人、『オンドリュー』が、独自の調査を行った結果、『ゼノのアジトの一つ』と思しき場所を発見した。今夜、奇襲をかける予定なのだが、それに参加してもらいたい」
「おおせのままに」
そう言って、センはしっかりと頭を下げた。
★
パルカの部屋から出たところで、
クロッカからの『通信の魔法』がセンの脳内に届く。
『すぐにクロッカの部屋に来るように』というメッセージに対し、センは、
「おおせのままに」
四方八方にシッポを振っていくスタイルをつらぬく。
『小物』を演じることに何の抵抗もないセン。
特殊なプライドは激烈に高いのだが、こういう場面でのプライドは皆無な閃光。
奥深い変態キチガイ……それが、彼、センエース。
……転移の魔法で、クロッカの部屋の前に飛ぶと、
センは、最低限の身なりを整えてから、ドアをノックする。
『入れ』という短い命令に従い、センは、クロッカの自室に足を踏み入れた。
(……質素だねぇ……俺的には高得点だが、貴族としては0点じゃね?)
クロッカの自室は、パルカの自室と違い、豪華な調度品などは一切なかった。
女子らしさなど皆無。
『高次の断捨離でもしてんのか』ってぐらい殺風景。
クロッカは、イスに腰かけて、大きな窓の外を眺めていた。
センが自室に入ってからも、5秒ほどは黙って、自身の背中だけを魅せつけた。
そんな、『明らかな含み』のある『無言の時間』が数秒過ぎたところで、
クロッカは、ノールックのまま、
「座りなさい」
そう命令してきた。
センは、御言葉に甘えて、近くのソファーにドカっと腰をおろす。
クロッカは、『威圧的なノールック』のまま、背中で語る。
「それで? 詳細を聞かせてもらえる? うまく、お兄様の懐にもぐりこめた?」
「ええ、まあ」
「分かっていると思うけれど、一応言っておくわ。……あなたは私の剣。いずれは、お兄様とお父様の首を狩ってもらう。……なんだったら、おじい様も曽祖父様(ひいじいさま)も、まとめて、私以外の龍神族を皆殺しにしてもらう……その大前提、わかっているわよね?」
「もちろんですとも、お嬢様。俺はあなたの剣」
「……いいわ。で? 詳細は? お兄様と、あなたの間で、どういう話し合いが行われたの?」
そこで、クロッカは、ようやく、
威圧的なノールックを解除して、
センの方に、強い視線を向けた。
……と、そこで、ようやくクロッカは気づく。
センの首に、『首輪』がかけられていること。
「っっ?! あなた、その首輪!!」
「ん? ああ、オシャレでしょう? 俺としては、『もっと腕にシルバーまくとかした方がいいかなぁ』とも思うんですけど、今の俺の『男度』では、この程度が精々だろうと、ガイアがささやくので……」
などと、何言っているかさっぱり分からない戯言をほざくセンに、
クロッカが、目を血走らせて、
「どうして、その首輪をつけたの!!」
と、ブチギレてきた。
センは、耳をふさいで『やかましい』のポーズをとりつつ、
「そこに首輪があったから……とでも申しましょうか」
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