第10話 強欲。
10話 強欲。
「醜いブサイクだった。ヘドが出るツラをしている」
「……」
シュンとするセンエース。
ちなみに、カドヒトの容姿は、センのまま。
現状、センは、自分に対して、
『認識に齟齬が出る幻術』をかけているため、
『カドヒトと同じ顔』だとは認識されていない。
「……まあ、顔はともかくとして……強さの方はどうだったんすか? 十七眷属を二人も殺せる実力者だから、長所は逃げ足だけじゃないでしょ?」
「ああ、私には勝てないが、私ともまともに戦える数少ない強敵。戦ってみた感じだと……おそらく、君とほぼ同等」
「ほう。それは、なかなかの強さですね」
「僕が、政務に追われていなければ、地の果てまで追いかけて、殺しつくしたいところだが……あいにく、僕は忙しい。カドヒトと追いかけっこばかりしていられない」
「でしょうね」
「そこで、君の出番というわけだ。セン。どうにかして、カドヒトを討伐し、ゼノを壊滅させろ。これが、最初の命令だ」
「おおせのままに」
そう言って、大仰に頭を下げるセン。
『命令通りに動きますよ』と体全体で示しているセンだが、
もちろん、カドヒトを潰すつもりなどない。
むしろ、これから、『ゼノ』を上手い事利用して、現状の支配構造をしっちゃかめっちゃかにしてやるつもりである。
そんな腹黒い感情がありありと出ている表情で笑っているセン。
頭を下げているので、パルカには見えていないが、今が、これまでで一番黒い顔をしている。
……センが、『そんなにもヤバいことを考えている』などとは知る由もないパルカが、
呑気に、
「ちなみに言っておくが、僕の命令は、それだけじゃない。他にも色々とやってもらいたいことが山ほどある。君のように優秀な存在は稀なんでね。できるだけ使い倒させてもらうつもりだ」
「はなから覚悟の上ですよ。クロッカ様とパルカ様……両方から『だいぶやべぇ無理難題』を言われるであろうことは最初から理解した上で、俺はここにいる」
「できれば、僕の専属になってもらいたいんだが? クロッカとは縁を切ってもらいたい」
「それはできません」
「ふむ。ちなみに、それは、なぜだ? アレに固執する理由は?」
「固執してるんじゃないすよ。『クライアントの数』は『多いに越したことない』ってだけの話。それに、『もし』、あんたらが仲たがいした時なんかに、『橋渡しの役目』なんかもこなせないかなぁとかも考えているんすよ。その仕事をこなした時には、もちろん、報酬をもらいます。大きな報酬をね」
「……強欲だな」
「俺は、死ぬほど強欲っすよ。『いらないもの以外は全部欲しい』と思っております。ちなみに、『いらないものリスト』の最上位は、『王の地位』です。どうです、支配者サイドからした垂涎モノの配下でしょう?」
「……」
『全部を望んでいるセン』に対して、
パルカは、少しだけ『脅威』を感じた。
全部ということは、龍神族の利権もまるごと望んでいるのではないか、と。
しかし、同時に、先ほどのセンの『答え』である『王の地位は望んでいない』というのにも信憑性は感じていた。
センからは『強欲さ』は感じるものの『下衆な欲望』は一切感じなかったから。
(思想、スタンス、方向性。……とにかく、全てが歪んでいる……こいつは異質だ……)
センエースには、特別な恐怖を感じる。
恐怖というか……畏怖というか……
人が人に感じるソレとは別格の何か……
それを、センには感じずにはいられなかった。
センエースは、あまりにも異常だった。
(……こいつの妙な怖さ……正直、楽観視はできない……)
だが、と、パルカは心の中で笑う。
(……しかし、そこまで躍起になる必要もない。……こいつは、すでに首輪をつけた。……つまり、もう、僕には逆らえないことが確定している)
事実、首輪の効力は絶大。
センエースが異常すぎるため、ただのファッションに成り下がっているが、本来であれば、誰もパルカに逆らえなくなる最強の首輪。
(もし、センが反旗を翻したら……その時は……首を絞めて殺せばいい。セーフティの機能に問題はない……)
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