霽れを往く

朝靄あさもやに霞む島々を飛び越しながら僕は往く

絶え間なく流れゆくうしお

砂城のように紡がれる営み

進むにつれ明らかになる推理小説のように

神秘のベールに包まれた静寂を抜け

れわたる街を目指す


先立つものは何も持たないようにした

ただ、流れる風に身を任せ裸足で駆け抜ける

そこにあるのは苦し紛れの虚栄心などではなく

耽美を慈しむ愛情だけだった


さあ、今こそ弓を張り

海猫が鳴くように

海鳴りが響くように

己が道で極めし音を奏でよう


先は見えないのかもしれない

希望があるのかもわからない

そこに答えはないのかもしれない

それでも僕は歩みを止めない


鬱の雨が降ろうと、濃霧にかどわかされようと

ただ思いのまま無我夢中に

音を、奏で続けよう

そうすればきっと


いつか夢見た霽れに出逢える


朝靄に霞む島々を飛び越しながら僕は往く

もう空は霽れた


ありがとう


あとは、もう…


(2024 11/16 来島海峡大橋にて)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る