幕間の空

演目を終え、役者達が礼をしている。


今日も素晴らしい劇だったと、満ち足りた心で空を見上げる。

東雲色の空には礼賛の喝采が鳴り響き

幕間の空を海へ還るつがからすの群れが飛翔している。


やがて幕が降りると、辺りには演目の余韻とも呼べる残影がほんのり暖かく香るだけになった。


私は客席に座り、それを最後まで噛み締める。


橋掛の奥で海鳴りが小さく木霊している

紺碧へ移りゆく空に明星が燦然と輝き出した。

刹那、山々の峰から、本舞台へと風のうたいが響く。


ゆっくりと、薄霞を纏う月が橋掛を渡りやって来た。


幕間の空はいつしか遠く、いつの間にか凪いでいた。


もう君はそこにはいない。

ひどく悲しい飛行機雲が水平線に向かってどこまでも伸びているだけだ。


幕間の空


それは僕を残していった君と、再び逢える一縷の希望。


また、明日ね。


そう呟く僕は、月を背に劇場を後にした。


もう、そこに君はいないから。

夜はもう、始まっているから。


(2024.11月11日 逢魔が時にて)

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