硝子の彗星

海へ向かって伸びる影が空と繋がった。


この景色の先に何があるのかを知りたくて

虹色の蝋翼で、私は飛んだ。


肩で風を切りながら、硝子の天蓋を突き破り


私は空へ昇ってゆく


私の心を支配していた冷たい閉塞は、いつのまにか消えていて

夢のように優しく頬に打ちつけて真下へ落ちていった。


私を縛るものは、もう何も無い


曇天の空に光の矢が放たれた

私は今、誰よりも自由だ


群青に染まり出した空に、空を駈ける彗星の残響が轟く


あぁ、虹色の翼。お願いだから今だけは


私の影の繋がりを絶やさないで

私に夢の終わりを見せないで


群青に染まり出した空に、空を駈ける彗星の残響が轟く


私の旅はもう終わる

後は堕ちていくだけ


さようなら彗星さん。また、八万年後ね


(2024 10月20日 彗星を探す旅と海辺で見た彩雲から)

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