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「ねえ、おきなよ。ごはんだってさ」
ゆすぶられて、目をひらいたら、そこには青い女の人がおった。
「もう十分ねたでしょ。わたし、だれだかわかる?」
わからんわい。
「エルよ。きみの従姉。ほら、一回テレビ電話でしゃべったことあるじゃない。八年くらい前に」
なにゆうてるねん。二歳のころのことなんかおぼえてるかいな。ぼくは目をこすって、あくびした。時差っちゅうもんがあるんやからさあ。
「ねえ、わたしきみのこと、ハマオってよぶから、きみはわたしを、お姉ちゃん、ってよびなよ」
はいはい、みたいな感じでぼくはうなずいた。
「ちゃんといって。ほら、お姉ちゃんって」
「お、お、おね……」
エルさんはふしぎそうな顔で見つめている。
あーあ、初対面の印象がむちゃくちゃになってしもた。ぼくかて仲ようなりたかってんけど。
ほんまのことゆうと、お父さんから従姉がおるって聞いて、ちょっとだけたのしみやってん。ぼくって一人っ子やから、きょうだい、それも姉とゆうもんがおったらよかったのにって、想像したことはけっこうあったんや。でももうあかんわ。
よう見ると、顔は青くてもわりときれいな人やん。中学生か高校生か、そんなもんやろか。女の人の年はわからん。あっ、目ぇおうてもうた。はずかしっ。
「まあ、いいわ。これからいろいろおしえてあげる。ハマオ、よろしくね」
……そうかいな、よろしくされてもうた。こっちが地球語おしえてあげたいくらいやけど、むりやろな。
夕ごはんはなんかごちそうっぽい料理がいっぱいテーブルにのっとった。ただどれもこれも、たべたことないもんばっかりやから、口にはそらあわんよ。お母さんのつくったやつとはぜんぜんちゃう。この青い魚みたいなんはなんなの、っておばさんに聞いてみたかってんけど、それもできず。
しゃあないからがんばって、おいしそうにたべてるふりしたったわ。こっちは子どもやねんから、この人らにきらわれたら、たぶん生きていかれへんやろう。追い出されることだけはさけなあかん。ぼくは本能でそれを感じ取った。
でも会話はようできんから、せいぜいにこにこして、ぶんぶんうなずくくらいや。ぼくの演技力なんか、そんなもんやで。
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