第13話

すぐに電話をとり



「ーはい、どうかした?…タクト」


「あー…寝てた?」


タクト…かな


ハヤトくんじゃ…ないよね?



「あ、寝てたんだけど、ちょうど今、起きて

うん、平気」


「そ……感謝してんだよ、お前には」


心做しか優しく聞こえる


タクトがこんな優しい声話す?


ハヤトくん…では?


「…ハヤ」

「ちょ、ちょっとまって…タクト」


「あ?」


「私も話があって…」


「はあ?話?」


「う、うん…言っていいかな?」


「チッ…早くいえ」


…タクトだ


完全なるタクトだ


まったく、ぜんぜん優しくねぇ


さっきの優しく聞こえたのは気のせいだったな



「あ、やっぱいいや…タクトどうぞ続けて」


「…」


「きにしないで…さ、どうぞ」


「…ハヤトが前みたいに戻りつつあると思ってたけど、原因わかんねぇし、聞いても教えねぇし…


クソガキの前でそれをみせることはないから

それでもいいかと思った」


「え!?だめでしょ」


なにいってんだ。タクト


「まぁーな、

教室でてった時はもう無理だと思ったけど、

…ハヤトは戻ってきた


お前のおかげ


マジで…感謝してる、ありがとな」


「いやいや、私はなんも」


「思えば聞き取れないイラつく電話でリンカのこと言おうとしてたんだろ?」


「はい。そのとおりで」


「悪かったなあの時は、聞かずに切って」


「はは…しかたないよ、ずっと泣いてたから」


「あー…すげーイラついた」


「うっ…ごめんなさい」


「ふっ…まぁいいよ

で、リンカのことなんだけど」


「うん…」


リンカが怖い


大切なものを壊すと言ってたリンカのことが



「誰にも言うな」


「え?なんで?」


言っちゃダメなの?

言わなかったにしろ

リンカがその前にネタバレする…かもよ


「俺に考えがある…」


さすが自称天才


「お前はなんもしなくていい

いつも通りしてろ」


タクトがそういうなら…頼りになる天才だ


「わかった…なにをするの?」


「リンカを追い出せねぇなら

抜けてもらうだけ、関わりをたつ」


「ん?どういうこと?」


「何も知らなくていい

ハヤトはリンカを許すつもりでいるから、ハヤトに何もいうなよ」


ハヤトくんは仲間思いだから


たたかれた本人が許すとしても

私は許せないよ


タクトも許せない

同じ意見でよかった


「うん…わかった

ハヤトくんたち仲直りは…できそう?」


「まだ、させない

でも、ちゃんとするから、安心しろ」


「うん」


「で、アイツの連絡先教えろ」


「アイツ?」


「アイツだよ、リンカの幼なじみっつう女」


「あーミヤビ?」


「そう、アイツに話がある」


話?なんの話しが


「…わかった」


「詳しくわかれば連絡するから

お前はなんもしなくていい」


「わかったよ、何度もいわないで」



「次は…兄貴の出番だ」



タクトがいてくれてよかった


本当に


ハヤトくんのお兄ちゃんがタクトで本当によかった


もう大丈夫


あの夢は現実にはならない


私1人じゃない


皆がいるんだ





「タクト…おねがいがあってー…」




「あ?…はぁー……ランカ」



この声で


優しい声で名前を呼ばれたら



もう安心して眠れる

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る