第48話 他国の反応

 キクーノス=オーガミ王は考えていた。

 神の使徒とも言われる者達。


 自分たちの知らない知識を持つ。

 そんな話が、エジーヲ=ゴーバメッド侯爵からもたらされたとき、真偽を確認しまことだと知った。


 そして強力な聖魔法を使い、モンスターを倒す。


 興味が湧いた。

 彼らは何を知っていて、何が見えているのか。


 そうこうしているうちに、ダイモーン王国へと行き、気がつけば王となったと伝えられた。

 彼の国の王、タターリメ=ヨワーリは、名君では無かった。

 安定をした世ならそこそこいけただろうが、流行病に不作。


 悪い事が重なれば、民の不満は国へと向かう。

 歴史の中で繰り返されてきた事実。


「そこで判断をしたと言う事は、何かがそなた達の中に、見えたのだろう。じゃから、私もそれにならってもかまわん」

 その王の言葉に、周囲の者達が驚いた。


 実質、龍一達は今、二国を併合して管理している。

 潅漑と、肥料の概念は、古い貴族達を驚かせた。

 だが言われてみれば、その事を知っていた。

 同じ作物を作る連作。

 それをすると、絶対と言って良いほど収量が下がる。

 それを知っていたが、手立てが無く、やみくもに新しい農地を作っていた。


 そのため、人と金を送り、開墾を続けてきた。

 そんな手間よりは、堆肥を作る手間のほうが少ない。

 それだけで土が復活をする。

 ならば、豊かな森も守ることが出来る。


 そう森を開墾すると、野生動物が減る事は判っていた。

 だが止められない開墾。

 それは王も考えていた。


 長年の問題を、あっさりと解決をする知恵。

 今王国に必要なのは、我らでは無く彼らでは無いか……

 そんな事を、ずっと……


「王様それはあまりにも、いきなりでは無く、もう少しお考えと、その…… 調整を行いますので、リュイチー=ジンノー様、そして皆様は、休憩をお取りください。お願いいたします」

 宰相はあわててそんな進言を行う。

 悲愴な顔で……


「承知した。部屋を頼む」

 こちらも王である。

 やっと、それを思い出した。

 謙ってはいけない。


 ぞろぞろと、部屋へと案内をされていく。

 

 その後方、王都まで二週間程度の所を、皆はたらたらと歩いていた。

 兵達に会っても、格好を見たらなぜか目をあわさずに逃げていく。

 これは初期に出していた王の御触れの影響。

 

 まあ皆は色々なところを楽しみながら、移動中。

 そして到着する頃には、すべてが終わっていた。


 この重要課題。決定するまで、二日を要した。

「王国は、貴国の傘下へ入る。よろしく頼む」

 そう言って王が頭を下げる。


「判った、共に発展をして行こう」

 それを聞いて、どわっと会場が盛り上がる。


 普通なら、反対する貴族の十や二十が出てきそうだが、先日全滅をしていたため文句は出なかった。


 それどころか、この大陸を走り回っている商人からの情報、それが大きかった。


 宰相は、関わりのある商人を集めて、聞き取り調査を行った。

「貧乏でどうしようもなかったダイモーン王国です。流行病の災害後、このまま潰れるのでは無いかと商人仲間で噂になっていました」

 周りの者達も、そうだろうなあと頷いていた。


「得意先が消えればその損失が大きく、大変なのですよ。むこうもその調子だったし、おかげで貸し付けも結構な額でしたから」

 また周りはうんうんと頷く。


「それでまあ、サンドウ皇国の検問とかも面倒でしたし、少しだけ期間が空いたのです」

 また皆うんうん。


「でまあ、彼の国へ久しぶりに入国した瞬間から、全く違っていました」

 またうんうん。


「国境を境に、びしっと石の敷かれた街道が現れたのです」

 わーと拍手が起こる。

 皆同じだったのだろう。


「そこからは、二十五キロごとに宿場が整備されていて、そこで出される料理が美味い。そして、ランクごとの宿。一般人なら此処、商人なら此処、貴族ならここというようにわけられていて、相場に応じたサービス。そして、食い詰めた者達の宿が、救済の砦とか言うのがあって、泊まれるし、飯は出るし、仕事の斡旋までしてくれる様です。あれは画期的だ。そのおかげで、盗賊も出ず快適でした」

 その言葉には、聞き取りに来ていた兵達も驚きの声を上げる。


「そして、少し見ないうちに、大きく代わっていた王都」

 またうんうん。


「町中に橋になった水路が張り巡らされていて、そこから各家に水が供給されていました。そして、どうやら地下にも水が流れていて、し尿や汚れた水はそこに流れるようです。聞けばそれが病気の蔓延を抑えるとか。そうだ、宿では徹底的に手を洗わされました。それと、風呂に入れと。これは病気の予防と、疲れを取るために、義務となったようです」

 今度はざわざわ……


「当然道も……」

 まあ、そんな話と、畑のすごさを聞いて、決定する。

「知恵を借りて発展し、国力が上がればまた考えよう」

 そんな、少しズルい決定がなされた。


 だがまあ、インセプトラ―王国はそれで良かったが、この大陸には、残り二つの国がある。

 大きかった三つの国が統合。

 その知らせは、驚きと恐怖を与える。


 チューカンノ王国と、チーサイノ王国。

 チューカンノ王国は、インセプトラ―王国と国境を接している。

 チューカンノ王国、国王カーチョウ=レベールは、顔を突き合わせてこれからのことを、宰相カチョンヌォ=ホーサと相談をする。


 方向性は、擦り寄るか、敵対するか、何とか上手くである。

 異例の議題は、貴族まで巻き込み、あーでもない、こーでもないと、なにも決まらず、会議が続く。

 問題は、会議のための会議が開かれ、収拾が付かなくなっていった。



 そして、チーサイノ王国。この国は、ダイモーン王国と国境を接している。

 国王カーカリーチョも同様に、宰相フーツノ=シュニーンと顔を突き合わせ、知らせを見ていた。

「まあしかし、我が国など、大国の決定に従うだけですな。大きな所の言うことを聞くしかない」

 こちらは、はなから諦めたようだ。

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