第49話 行動は必然

「なに? 大豊作?」

 三国が統合をして、何事もなく季節は進む。


 チーサイノ王国では、不作では無いがぼちぼち。

 この一年は、モンスターの出現も少なく平和な一年だった。


 だがそこに入ってきた情報。

 インセプトラ―王国はまだしも、前年人が死に絶えるレベルで不作だったサンドウ皇国まで、豊作だという事だ。


 彼の国は、国土が狭く、永遠に開墾をすると言っても無理があった。


「一体どうやって?」

「新しく国王となった者、そしてその周囲、賢者の集団だという噂でございます」

「何? 賢者、それはこの世界のことを、すべてのことわりを知る智の者。それはズルい。あっいや、その者達年はいかほどだ? 娘を送ろう」

 その決定は、電撃的に決まった。


 彼らは、もう二十三歳になっていた。


 そこにやって来た、騒動の種。

『貴国との友好の証として、婚儀を前提に、我が国の姫を送ろう』

 そんな手紙を携えて……

 そう先触れでは無く、本人が持って来た。


「なんで、またなの?」

 森 澪再び激おこ。


「オレが求めたわけじゃ無い」

「当たり前よ、求めたのなら撃つわよ」

 魔導銃の先端がこちらを向く。


 最近作った護身用短銃。

 土魔法を利用して、小さいながら数千発撃てる。


 場所は謁見の間。

 王座に座る龍一、横に控えニヤつく楓真。

 そして左横に凜とした姿で立っている、澪。


「お目に掛かれ、光栄でございます。王よ」

 見事な挨拶を行い、ステキな笑顔を振りまく彼女は、チーサイノ王国第一王女オフィレディヌ。

 十七歳……


「若いわね」

 横からぼそっと声が聞こえる。


「父、我が国の王から、手紙を預かってまいりました」

 兵が預かり、楓真に渡る。


「苦しゅうない、読め」

 にまにまが止まらない楓真が読み始める。


「貴国との友好の証として、第一王女オフィレディヌを遣わす。貴国からのご助力と、協力関係を我は望む」

 まあ言い回しはあれだったが、要約すればそんな感じの内容だ。


「ウム判った、貴国との友好はこちらも望む所、オフィレディヌ殿は、旅の疲れもあろう、ゆるりと逗留をして、杉原。お前は側室もおらん任せる」

 それを聞いて、楓真はうんうんと頷いていたが固まる。


「はっ? なんつったおまえ?」

「控えろ王の御前である」

 びしっと、澪からのお言葉。


 その佇まい、そして目。

 楓真はかえるになった。

 硬直をして、冷や汗だーらだら。


 澪も怖いが、結愛も怖い。


 オフィレディヌにしてみれば、王の側室が良かったが、三国を併呑した王。

 国力を考えれば、宰相の元へと言われても不満はない。

 見たところ、どちらも珍しい黒髪黒目。

 身長も高く凜とした佇まい。


 それに、聡明で優しそう。

 おらわっくわく状態だった。


 彼女は、城の中で乳母に育てられ、色々な話しを聞いて、キラキラとその話しに夢を重ねていた。


 王族という身分。

 この国は、結構広いのに、それ以上に大きい国が幾つもある。

 王太子である兄、王太子ノーマシャインが居る以上、女の身であるわたしは、他国かこの国の貴族へと嫁ぐ。


 まだ見ぬ世界。

 まだ見ぬ夫。


 そうそんな妄想をする日々が終わり、父である王から告げられた言葉。


「短期間のうちに、三国を併合した者が居る。そしてその集団は賢者であると聞く。お前は嫁ぎ、我が国のために助力を願え、お前の身にこの国の未来が掛かっている。頼むぞ」

 そう父からお願いをされた。


 敵対などとなれば、あっという間に潰される。

 私は、そんな切っ掛けを与えてはならない。

 そして、技術と智を国へわけて貰う。


 初めて見る、王様と、横に控える宰相様。

 美しいのはお妃様だろうか?


 お言葉は頂いた。

 これから、どんな生活が始まるのでしょうか?


「宰相様、よろしくお願いいたします」

 そう言って礼をする。


 なぜか、ひどく困惑した様子だけれど、お言葉を頂いた。

「ああ、こちらこそよろしく頼む」

 短くそれだけ。

 それに、急激に顔色が……

 どうしたのかしら?


 そう思いながらも、退室して、割り当てられた部屋へ向かう。

 城から見える景色は、国とは違い、どこまでも広かった。


「うおおおい、何だよあれは聞いてないぞぉ」

 悲壮な感じで楓真が詰め寄って来る。


「大丈夫よ、結愛も興味芯々だから」

 澪が笑いながらそんな事を……


「意外と王女様って初心だし従順なの。三人でするエッチも教え込むとすんごいの」

 そう言って、澪の顔が見たことないほどだらしなくなる。


 あれだけ怒っていたはずだが、受け入れた後何があったのか?

 確かに、三人なら色々とできるだろうが、いいのかそれで……


 納得済み?


 そう、澪が言ったとおり、結愛は納得をしていた。

「彼女も立場があって、断ると殺されることもあるらしいのよね。殺されなくとも幽閉とか、かわいそうじゃ無い」

 そう言って、言い訳をする結愛だが、妙に色っぽくうずうずしている。


「何を隠している?」

 そう聞くと、こちらをじっと見つめる。

 少し考え込んだ後、教えてくれた。


 人間、大人のおもちゃ……

 こいつら、お姫様を、なんと言う扱い……

「上下関係は絶対なのよ」

 そう言って、嬉しそうに彼女は笑う。

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