第32話 あれよあれよと……

「ぐわぁ……」

 人が助けに入ったのに、背後で王太子の叫び声。

 近衛兵のお代わりだ。


「畜生、殺されるなよ」

 とりあえず、姫様ご一行を助けに行く。


 剣で捌くが人が居り乱れて面倒だ、素手と魔法に切り替えて、殴ると同時に火を放つ。

 するとだな、当然ながら、喰らった奴は目をつむったままで走り回るんだよ。

 そしてこの城もだが、造りは石組みだが、可燃物がある。


 気がつけばファイヤァー……

「俺のせいなのか……」

 少し落ち込む。


 それを見て、さらに人々は逃げ惑う。

 そうこれのおかげで、近衛たちもパニック。

 火を見たせいか、正気に戻る奴が出始める。

「これは一体?」

「王も王太子も、お前たちの仲間がやったんだ。火を点けて回ったのも近衛兵だ」

 嘘は言っていない。


 俺は殴って火を点けたが、暴れて延焼をさせたのは近衛兵だ。


「なんと、では、我々は操られていたのか」

「宰相様の訓告を聞いてから、記憶がありません」

「そうだな」

 何か納得をしてくれた様だ。


 とりあえず水の魔法で火を消す。


「君は魔法使いか?」

「彼は、インセプトラ―王国からの助っ人です」

「では、話にあったのは君らか」


 ヘイド=ハンター準男爵達は、此処まで帰ってくる途中の行った会話の中で、彼らの異様さを見知った。


 冒険者だと言うが、暗算はもちろん高度な算学を操り、偏ってはいるがダイモーン王国では知られていない常識まで当然の様に知っていた。


 伝説にある、異世界からの迷い人の伝承。

 彼らは、それではないかと考える。



 こんな事があった。

「その石を、こっちによせてくれ、竈門を造る」

「ああ、これ結構重いぜ」

「ばかだなあ、重力を遮断しろよ」

「ああそうか、そうだな。うらあ」

 まあ単に気合いでなんとかしたのだが、準男爵達には聞き慣れない単語が出てきた。


「すまない、重力とはなんだ?」

「重力は、引き合う力だ」

「引き合う?」

「ああこうやって、石を落とすと地球…… じゃないな、星に引かれる。これが重力だ」

「なんと、重さというのは引かれる力だと?」

「小石が軽いのは、小さいからだ」

「だが、大きくとも軽いものがある」

「そいつは…… 質量だったかなそれが軽いんだよ」

 それ以降は、準男爵達も理解ができず残念だった。

 だがこの者達、見かけよりも賢人である。


 他にも、星は丸く、空の星々は他の太陽であるとか、同じ太陽の仲間である星々が有り、月はこの星の周りを回っているとか。

 それにも、引き合う力である重力が関係をしているとのこと。


 それの影響で、海の潮位が変化することまで。

 恐るべきは、何ヶ月も歩かないといけない、海についてもこの者達は詳しい。

 そして余所の大陸。


 あめりきゃ? とか……


「ともかく、彼らは我々の知らないことまで見知っている賢人です」

 その報告は、当然王にまで届いていた。


 この騒動が終われば、少し政務的なことについて助力を願おうとか考えていた。

 そうそのメモ書き程度のものが、騒動を起こす。



 俺達は、ともかく近衛たちをぶん殴り目を覚まさせる。

 王族を守り、城を走り回る。


 その頃、外では夜が明けてきて周囲を警戒していた兵達から報告が入る。

「町の外、周囲が死人に埋め尽くされています」

「なに? こんな時に」

 近衛たちは、命令を各方面へと伝達をしに行く。


 王と王太子が死に、命令を出せるのが王妃様。

「どうすればよろしいでしょう?」

 王妃様はオロオロするだけで話にならない。仕方が無いので、俺達が代わって命令を出す。


 そうは言っても、まともな攻撃の出来ない兵が、外に出てもゾンビの数が増えるだけだ。


「門をすべて閉じて籠城。這い上がってこないか監視しろ」

「はっ」

 

 疲れてやって来て、やっと休めると思った矢先に騒動。

 いい加減、皆の疲れがピークになって来た。


 少しだけ休もう。

 そう思って、安全な部屋を聞く。

「でしたら、私たちの部屋へ」

 そう言って、俺達は少しだけ寝た。


「不思議な黒髪ですわ。どこから来られたのでしょう」

 そこにいたのは、俺達に興味を持ったお姫様。


 だが俺は、寝ぼけて澪と勘違い。

「もう少し寝かせてくれ」

 そう言いながら、ちゅっと……


「まあっ、今のはくちずけ…… お母様……」

 貴族王族を含めて、この世界処女性が重要視される。


 そう、第一王女デレシアは、この後迫ってくることに。

「神野様。婚姻を望みますか? それとも、絞首刑? どちらがよろしいでしょうか?」

 彼女はにっこりと微笑み聞いてきた。


 物騒なプロポーズだろ……


 そして今、王も王太子も死んだ。

 そうだよ。



 まあそんな話になる少し前、俺達は起き出して、町の城壁へと向かう。

 そして周囲に向けて浄化を放射。


「おい町の人達、外に居るゾンビが成仏できるように願え…… ああそうか、死人だ死人」

 そう、少しは知り合いもいるだろう。

 パニックを起こしていた、町の人を鎮めるための方便だったのだが、宝珠が発動。


 神野のもつ義の玉。

 彼の体が光り出し、それは伝説となった。


 町の壁、その上に立つ神野。

 そこから発せられる光は、王国全体を光で包む。

 その光は、暖かく人々の心を落ち着かせて癒していく。


「神だ」

 そう言って彼らは、さらに拝む。


「ぐっ、なんだこの光」

 この世界へ入り込んでいた魔族たちの変化がとかれ、彼らは浄化されていく。

 周りでそれを見たいた兵や使用人達。

 この国にいた、三分の一くらいの貴族が消滅をした。


「お母様、あれをご覧ください」

「あの方は、私たちを守ってくれていたお方。なんと神々しい。なんとしても彼を落としなさい」

「はい」

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