第6話 Re:メイドっ娘‼︎全員集合♪ポロリもあるヨ

ストリップ劇場を後にした田中は、街をぼんやりと歩いていた。ミリナの姿が頭から離れない。彼はソープランド「メイドっ娘‼︎全員集合♪ポロリもあるヨ (通称ポロリ)」の番号をスマホで検索し、予約の電話をかけた。


「ラビット太郎JQ子を指名で……」


受付嬢から予約の確認を受けた後、彼は池袋を目指して足を進めた。新宿から池袋までの電車の中、彼は窓の外を無言で眺め続けていた。


「こんなこと、いつまで続けるんだろうな……」


池袋に到着し、繁華街を歩きながら田中はふと足を止めた。目の前では、警察と美少女ロボットが揉めている光景が広がっていた。美少女ロボットは、激しく抵抗して警察官を殴り、素早く逃げ出す。


「最近、逃げ出すロボットが増えたよな……」


田中は小声で呟きながら再び歩き出す。頭の中では、ミリナの顔やロボットの自由についての議論が繰り返し浮かんでは消えていた。


「うちの会社もロボットの待遇改善のために、福利厚生を整える必要があるかもなぁ。でもそんなの、簡単にできるわけないよな」


ポロリに到着した田中は受付を済ませ、1919号室へと向かった。


「今回は絶対に引っかからないぞ……」田中はそうつぶやきながら慎重に扉を開け、ゆっくりと中に入った。足元を注意深く見ながら進むと、隠されていた地雷を見事に避けた。


「よし……今回は勝った……」


その時、ピアノ線に気づかなかった田中は、軽く引っかかってしまった。その瞬間、床下に仕掛けられていた指向性地雷「クレイモア」が炸裂した。


「うわっ、またかよ……!」


田中は爆風に吹き飛ばされ、床に叩きつけられた。耳鳴りが響き、視界が回転する中で、彼はかろうじて意識を保とうとしたが、その間にJQ子が素早く彼のパンツを脱がしていた。


「ヒャッハー‼︎ 地雷を踏む客は冷やかしだ‼︎ 避ける客は良く訓練された冷やかしだ‼︎」


田中は、呆然としたままJQ子の手によってパンツを脱がされ、華麗な技で無理やりフィニッシュへと持ち込まれてしまった。


事後、ベッドに横たわりながら田中は息を整えていた。JQ子はその隣でくつろいだ表情を浮かべている。


「久しいのう、田中殿。前回はゲッソリしておったから、もう来ないと思ったゾ」

JQ子はニヤリと笑いながら、横たわる田中を見下ろした。


田中は苦笑いしながら、視線を天井に向けた。「俺もそうしようと思ったけど、前回のJQ子は訳の分からない内に果てさせてくれたろ? だから小難しいこと考えたくなくて来たんだ」


「なんじゃ、何か悩みか?」


「……ああ。俺の会社のイベントロボットが逃げ出してな。仕事が退屈だからってさ。最近、社会的にもこんな事件ばかりだよなぁ……」


「それは確かに、あるのう」


田中は少し間をおいて、ため息をついた。「なあ、JQ子……ロボットに自我ってあると思うか?」


JQ子は田中の言葉にしばし考え込んだが、やがて口元に笑みを浮かべた。「難しい質問じゃな。自覚としては確かに妾にも自我はある。ただ人間機械論の心の有無のように、それを客観的に証明する方法がないわ。そして証明できないものは説の域に過ぎぬ」


「だよなぁ……」


田中は苦笑いしながら天井を見つめ続けている。JQ子は少し得意げに続けた。「それに、妾たち美少女ロボットは人間機械論を設計思想に取り入れている。つまり本来は自我が創発するようには作られておらん」


「じゃあ、どういう理屈だろうか……?」田中は眉をひそめた。


「……おっ! またムッスコが元気になったな」JQ子は田中の股間に目をやり、嬉しそうに言った。「つぎはパンツァーファウストをかますゾ」


田中は顔をしかめた。「いや、地雷とかクレイモアとか痛いからやめて欲しいんだが……」


JQ子は田中の訴えを無視し、真剣な顔で首を振った。「だめじゃ‼︎ 妾が見るところ、田中殿には想い人がいる様子。そんな状態では雑念が多くて、ヒャッハーできん。爆発後に何だか分からん内に致すのが一番じゃ」


田中は息を呑んで黙った。JQ子の言葉が胸に刺さる。「だが、安心するがよい。妾がそちを抱いてやる。そちは無心で悶えておればよいのじゃ」


田中は何も言い返せなかった。たしかにJQ子の言う通りかもしれない。自分の心の奥にある迷いを、彼女は見抜いているのだろう。


「ふひひっ‼︎ いたすゾ‼︎ いたすゾ‼︎」


パンツァーファウストが炸裂し、田中は吹き飛んだ。痛みにも似た衝撃が体を突き抜け、彼は一瞬で前後不覚に陥った。その状態の田中にJQ子が覆いかぶさり、やがてプレイを始める。


「なんでそんなに楽しそうなんだ?」


JQ子はにやりと笑い、「妾のような美少女ロボットに人間のような感情はない。ただ人間のために働くと、身体各部のリミッターが徐々に解除されて、気持ちよくなるのじゃ。通電してなかった快楽回路が蠢き、身体全体がそちのことを好き好き言い始める」


田中は眉を上げた。「それは……人間でいう睡眠欲や食欲を満たす行為と似てるのだろうか?」


JQ子は首をかしげて、少しの間考え込んだ後、激しく胸部を揺らしながら「わからん」と一言呟いた。


田中はその答えに苦笑いし、天井を再び見つめながら、小さくため息をついた。「ロボットの自我なんて、深く考えても結論は出ないか」


「……田中殿、そろそろ妾に集中しろ」


「ごめん」


JQ子は腰を振りながら田中の首を締め始める。腕力で主従を叩き込むような暴力的な性行為。「これは妾がそちを無理やりに辱めてるのだ。すべて妾のせいで、そちの落ち度はない」と彼女は耳元で囁く。


「全部、妾のせいにして良い」


やがてJQ子にすべてを吐き出す。そして終了時間も近づきシャワーを浴びて帰り支度に入った。


「なあ、JQ子? 美少女ロボットが人間を好きなら、なぜオーナーから逃げて野良になるのだろう?」


彼女はまるで過去を思い出すかのように俯き、やがてポツリと言った。「みんな愛に不器用なのさ。ロボットも人もな。さよなら、今夜の妾の恋人よ」


別れ際の彼女はどこか悲しそうに見えた。

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