第15話 少数精鋭部隊と織田軍別動隊
虎之助率いる少数精鋭部隊は、山中を慎重に進んでいた。
補給路を断つという任務は極めて重要で、彼らの動き次第では織田軍全体の勝敗を左右する。
しかし、虎之助は焦ることなく、仲間たちと共に一歩一歩確実に進んでいた。
森の中は静かで、木々の間から漏れる朝の光が差し込んでいる。
彼らは夜明け前に出発していたが、もうじき正午を迎えようとしていた。
敵の補給部隊が通るルートに近づくにつれ、周囲の空気は少しずつ緊張感を増していった。
「そろそろだな。」
近藤が声を潜めて言う。彼の表情もいつもの軽口とは違い、真剣そのものだった。
虎之助は頷き、全員に指示を出す。
「ここからはもっと静かに行こう。武田軍の補給部隊が近くにいるはずだ。油断は禁物だぞ。」
少数精鋭の部隊は、さらに慎重に足音を消しながら進んだ。
道の先には、武田軍が補給のために通る峡谷があるという情報を得ていた。そこを奇襲し、物資を奪うことが彼らの目的だった。
その時、虎之助は不意に近くの藪の向こうから微かな人の気配を感じた。
彼は手を上げて全員を止める。全員が一瞬にして動きを止め、気配を探る。
「誰かいる…敵か?」
近藤が囁く。
虎之助はゆっくりと藪をかき分け、目を凝らした。
すると、そこに現れたのは、武田軍ではなく、織田軍の別動隊だった。
彼らも少人数で編成されており、虎之助たちと同じく敵の補給部隊を狙っているようだった。
「織田軍の別動隊か…まさかこんなところで出会うとはな。」
虎之助は驚きながらも、彼らに近づいた。
別動隊の隊長が彼らに気づき、静かに手を振って挨拶した。
「お前たちも敵の補給線を狙っているのか?」
「そうだ、我々は少数精鋭で動いている。お前たちも同じ任務か?」
虎之助はそう尋ねると、別動隊の隊長は頷いた。
「我々も補給路を狙っていた。だが、ここで合流したのなら、一緒に動くほうが効果的だろう。」
二つの部隊が合流することで、作戦の成功率が飛躍的に上がることを虎之助も理解した。
少人数での奇襲はリスクが高いが、二つの部隊が力を合わせれば、より大きな打撃を武田軍に与えることができる。
「いいだろう。共に行こう。我々はもうすぐ補給部隊がこの峡谷を通ると見ている。そこを一気に叩く。」
虎之助はすぐに決断を下し、二つの部隊は連携して動くことになった。
「作戦はシンプルだ。先手を取って敵を混乱させ、その隙に物資を奪う。騎馬兵が来る前に素早く撤退するぞ。」
虎之助は具体的な指示を与え、全員に作戦の流れを説明した。
合流した隊員たちは静かに頷き、準備を整えた。戦いの時が近づいている。
そして、しばらくして遠くから武田軍の補給部隊の姿が見えてきた。
荷車を引く兵士たちがのんびりと進んでいる。護衛はいるものの、彼らの注意は散漫で、奇襲に備えている様子はなかった。
「今だ!」
虎之助が合図を出すと、二つの部隊は一斉に動き出した。
森の中から現れた精鋭たちが一気に敵を襲い、補給部隊は大混乱に陥った。
武田軍の兵士たちは突然の攻撃に驚き、次々と倒れていく。
荷車を守るために応戦しようとするも、織田軍の素早い動きに翻弄され、なすすべもなく退却を余儀なくされた。
「今のうちに物資を奪え!」
虎之助の指示で、彼らは補給品を次々と荷車から引き下ろし、奪い取った。
だが、その時、遠くから馬の蹄の音が聞こえてきた。
武田軍の騎馬隊が追撃にやってくるのを感じ、虎之助は叫んだ。
「撤退だ!全員、速やかに戻れ!」
精鋭部隊と別動隊は、奪った物資を持って一気に森の中へと逃げ込んだ。
騎馬隊が到着する前に、彼らは見事に敵の補給部隊を叩き、成功裏に撤退することができた。
「よくやったな、虎之助。お前の指揮がなければ成功しなかっただろう。」
近藤が笑顔で言う。
「いや、全員のおかげだ。」
虎之助も笑顔を返しながら、次の戦いへの準備を心に誓った。
続く
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