第14話 少数精鋭部隊の出発
朝日が山々の稜線を染め上げる中、虎之助と少数精鋭の部隊は静かに出発の準備をしていた。
周囲はまだ薄暗く、清洲城の外は冷たい空気が漂っていたが、彼らの間には緊張よりも奇妙なほどの落ち着きが広がっていた。
「いよいよだな、虎之助。緊張してないか?」
隣にいた隊の一人、近藤が微笑んで声をかけた。彼は長年の仲間で、何度も共に戦場をくぐり抜けてきた戦士だった。
和やかな雰囲気の中での声に、虎之助も肩の力を少し抜いた。
「緊張しないと言ったら嘘になるが、まあ、なんとかなるだろう。お前らがいれば心強いよ。」
虎之助は軽く笑って返した。少人数だからこそ、互いの信頼が何よりも大事だと感じていた。
「俺たちは精鋭だからな。失敗するわけないさ。」
別の仲間、吉村が腕を組んで自信満々に言い放つ。
それに続いて他の隊員たちも「その通りだ」と口々に同意した。
彼らはそれぞれが歴戦の勇士であり、仲間としての絆も深かった。
「このメンバーなら、武田軍の補給部隊なんて簡単に片付くさ。」
近藤も軽口を叩きながら、彼らの間には自然と笑みがこぼれた。
出発前のわずかな時間を、彼らは軽やかに楽しんでいた。
虎之助は、その光景を見て心の中で安堵した。
戦場では、時に命を賭けた真剣勝負が続くが、今こうして和やかな時間を過ごせることが、何よりも大切だと感じていた。
「よし、行こうか。」
虎之助が静かに声をかけると、全員が一斉に身を引き締め、準備を整えた。
彼らの士気は高く、目指すは武田軍の補給線を断つための奇襲だった。
出発直前、近藤がふと虎之助に耳打ちした。
「お前、千鶴にいいところ見せるために気合入ってるんだろ?」
その言葉に、虎之助は少し顔を赤らめながらも笑った。
「そうかもしれないな。でも、まずはこの任務を成功させなきゃな。」
少し照れながらも、虎之助は千鶴のことを思い出し、彼女のためにも勝ち抜く決意を新たにした。仲間たちとの信頼があるからこそ、この任務は成功するはずだと確信していた。
隊員たちは馬にまたがり、静かに出発した。
山中の細道を進む彼らは、まだ暗闇が残る森の中を慎重に進んでいった。
言葉は少なくとも、その背中には互いへの信頼と、成功への確信が漂っていた。
少数精鋭部隊の出発の先には、武田軍の補給部隊との激しい戦いが待ち受けている。
しかし、虎之助たちは焦ることなく、今この瞬間を大切にしながら進んでいた。
続く
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