第28話
「実は、そこまで活発には遊んでなかったんだよね。今俺たちが座ってるベンチで、ひたすら絵を描いてたんだ。」
当時を懐かしむように目を細めながら語る隼先輩の小学生時代は、俺にとって意外なものだった。
「どんな絵を描いてたんですか?」
「あそこの桜並木とか、今日みたいな綺麗な空とか。夏の暑い日は、あの川と目の前に広がる陽炎を描くのが楽しかったなあ。」
「…今度、見せてくださいよ。俺、絵心無いんで絵描ける人凄いと思います。」
「うれしい!海吏がそんなことを言ってくれるなんて。」
「そんなこと?」
「うん。俺の絵を見てみたいって言ってくれたこと。」
「まあ確かに、俺基本他人に興味ないんであんまりそういうこと言わないっすね。」
「それはなおさら嬉しいよ。」
隼先輩に言われて自分でも驚いた。
まさか自分から誰かの過去や、思い出に興味を持つなんて。
そしてそんな俺を見て、心から喜んでくれている隼先輩の姿に、俺も嬉しくなっているのが分かった。
「…このツナサンド、まじで美味いっすね。」
俺は自分の中に認めた暖かい感情を、そんな言葉で表すことしかできなかった。
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