第23話

「ごめん海吏!俺のグラス、席まで持って行ってくれない?このままトイレに行きたくてさ。」


「いっすよ。」


申し訳なさそうにする隼先輩の手からグラスを受け取り、俺は皆のいる席の方へと向かった。


「ねえ私、みんなと連絡先交換したい!」


ちょうど席に近づいたとき、ある女子が嬉々として言った。


「俺も俺も!何なら、グループL〇NE作っちゃう?」


「いいね!そっから個別に登録したい人をすればいいし。」


「ってそれ、俺のことちゃっかり登録しないとかやめてよ~?」


「そんなことするわけないじゃん!」



他校の美男美女同士がつながる瞬間を、俺は遠巻きから見ていた。


なんとなく、あの場に俺がいたら気まずいだろうから。


グループを作ったところで、誰も俺を追加などしないだろう。


俺以外の4人だけを追加して、そこからは個別で距離を縮めていくに違いない。



「…ていうかさあ、あの海吏って子。」


隼先輩がトイレから帰ってくる前に席に戻らねばいけないと一歩前に歩き出した瞬間、ある一人の女子が発した俺の名前に、俺の足は再び止まった。


「あの子のこと私知ってるんだけど、多分女子とL〇NEの交換とかしたくない人だと思うよ。」


「えっそうなの?」


「うん。だって前に言ってたもん。異性との交換はしたくない、めんどーだ、って。」


「まああいつなら言いかねないな。」


「だからさ!私が個別でグループに入れてもいいか聞いてみるよ。もしいいって言ってくれたら入れるし、逆にグルに入ってこなかったら断られたと思って察して。」


「ったくあいつはしゃーねーなあ。」


「っていうか、海吏くんと知り合いだったの?早く言ってよ!」


「まあ、言っても言わなくても同じかなと思って。」


「んーまあそれもそうか。」



会話を聞いていた俺は、ますますその場から動けなくなった。



だって今日参加している女子の中に、俺の知り合いは間違いなく一人もいないから…。

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