第21話

「よし!座席のシャッフルターイム!!」


開始30分かそこらで、瑠千亜が立ち上がって言った。


「男どもが一つずつ席ズレていくから、目の前にいる人同士でゆっくり話そうぜ!」



自分の飲み物を持って立ち上がる瑠千亜に、俺は余計なことをしやがってという目線を送ったけど気づいてもらえるはずもない。


ただでさえ、今目の前にいる子は俺のことなど見もせずに、ずっと俺の隣の隼先輩と話したそうにしている。


席の移動なんてしたら、俺と対面する時間がこの女子たちにとって地獄の時間になる。


……まあ、シャッフルすれば、今目の前にいる子がずっとその被害者になり続けるということが避けられるから……いいといえばいいのかもしれないけど。


「うわ!優くんっておっきい!今目の前に立った瞬間、改めて思った!」


「近くで見るとやっぱり五郎くんって色白で髪も綺麗で女の子みたいな顔してるよね!」


「めっちゃおもしろいんだけど!!瑠千亜くんって何でそんなにコミュ力高いの??」



それぞれが楽しそうに会話をし、ご飯を食べ、これこそが合コンであるというような盛り上がり方になっている。


ただし、俺と俺の前にいる子を除いて、だ。



「………なんか部活やってるの?」


「え?ああ、茶道部だよ。」


「そうなんだ。昔からやってたの?」


「いや。必ず部活に入らなきゃいけないから仕方なく入っただけ。」



さっきまで前にいた五郎先輩とはあんなに楽しそうに話していた子も、俺と話すときはほとんど真顔だ。


かといって俺もコミュ力はないし特別女子に興味があるわけでもないので、会話を深堀りする気にすらならない。



そんなことが何度も続き、結局瑠千亜考案のシャッフルタイムとやらは、俺にとっては地獄の連続の時間となった。

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