第20話
「そういえば、お菓子じゃないけど海吏も料理するんだったよね?」
隣に座る隼先輩が、俺の方を見て言う。
「はあ…まあ一応作りますけど。」
「料理出来る男子もいいよね!何作るの?」
「定番だけどカレーとか肉じゃがとか。あとは煮物とか魚をさばいて焼いたり煮たりするのも好きかな。」
「あっ……そうなんだあ。」
「なるほどねー。」
「海吏の料理、食べたことないけど美味しいって聞いてるからいつか食べてみたいな。」
「ほほう。こいつにも意外な特技があったとはな。」
「俺は料理はあまり作らないからな。是非今度、作り方を教えてもらいたいものだ。」
関心を持ってくれている隼先輩と瑠千亜先輩、五郎先輩の反応とは逆に、女子たちの反応は明らかにさっきの五郎先輩の話の時よりも鈍い。
まあそりゃあ、女子中学生からしたら俺の作る地味な料理よりも、五郎先輩が作るような洒落たお菓子のほうが魅力的に感じるに違いない。
「俺も実は料理するんだよね~」
「えっ!瑠千亜くんも?」
「何作るの?」
「最近、キッシュを作るのにハマってる。元々キノコとほうれん草嫌いだったけど、キッシュにしたら食べられたから、そっから何でもキッシュ化してるんだよね。」
「そんなキャッシュ化みたいにw」
「あとはパスタのソース作るのも好きかな。バジルとかアラビアータとか。」
「なんかすっごいオシャレ~!」
「んね!お店開けちゃうじゃん!」
「今度五郎くんのお菓子と一緒に食べさせてよー!」
ここぞとばかりにクールを気取ってかっこつけながら、瑠千亜は自分の得意料理について語っている。
さっきまではあんなに反応が薄かった女子たちも、瑠千亜の手料理は食べたいと喜んでいる。
(こいつ、普段あんだけヒステリックなくせに、得意料理がオシャレすぎってなんなんだよ。)
俺は単に自分の話が無下にされたことだけでなく、瑠千亜もやっぱりハイスペな奴なんだと実感したことに対しても、もっと惨めな気持ちになっていた。
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