第11話

「海吏!おつかれ!」


「……隼先輩?お疲れ様です。」



俺の隣に停めてある自転車に今まさに乗ろうとしていたのは、さっきまで話題になっていた隼先輩だった。


「先輩今日自転車なんですか?珍しいですね。」


「今の時期は風が気持ちいいからさ。しばらくは自転車通学にしようかなと思って。海吏は駅まで電車?」


「はい。」



フワッと、独特の匂いを運んでくる秋風が吹いた。


風に靡く隼先輩の柔らかそうな髪から、爽やかな匂いがした。


「……そういえば先輩、明日瑠千亜先輩たちと遊びに行くんですね。」


「まあね!他校の人も来るみたいだけどね。」


瑠千亜の言ってた通り、その「他校の人」が彼氏を作ることが目的の女だということを、この人は全く知らなさそうだ。


「……瑠千亜先輩からなんにも聞いてないんですか?」


「ん?何を?」


「その他校の人ってどんな人たちか、とか」


「瑠千亜の知り合いの女子って言ってたかな。もしかしたら受験して高等部からうちの学校に来るかもしれない人たちらしくてさ。今から交流しておくのもいいかなって瑠千亜に言われて、確かにそうかもって。」


「…そーなんすね。」


ほんとに何も知らないんだな、この人は。



それにしても……



改めて近くで見ると、マジで綺麗な顔してる。


テニスで日焼けしてるはずなのに、信じられないくらい肌が綺麗。


紫外線を浴びてるはずの髪の毛も、傷むことなくサラサラしてる。


目、鼻、口、耳……


どのパーツもバランス良く配置されている。


(こんな顔に生まれてたら……俺も明日の合コン行けたのかな。)



……なんてついそんな不釣り合いなことを考えてしまった自分が恥ずかしくなった。

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