第5話

俺の名前は藤井海吏。


都内随一の有名私立と言われている、旭堂きょくどう学園中等部の2年生だ。


小学校の時から続けてきたソフトテニスを部活動でもやっているが、正直やる気はない。


うちの学園は全国から各部活の"バケモン"が集まってくる。


その結果、どの部活も全国大会常連だ。


もちろん、俺が所属しているソフトテニス部も、小学校の時に全国優勝している奴らがいて、将来プロを目指している部員までいる。



勉強に関しても、中学受験の偏差値は80に近いと言われている。


エスカレーターで進学する高等部からの卒業生は、ほとんどが旧帝大か難関私立大学に進学し、中には海外の大学に行く人もいる。


さらに政治家の子供や全国的に有名な医者、弁護士の子供、セレブ芸能人の子供も何人か在籍している。



そんなきらびやかな私立中学の中で、俺は一際目立つ存在だ。


もちろん、悪い意味で、だが。



俺の両親は大手物流会社の経営者であり、父の実家も江戸時代から続く老舗高級旅館の経営をしているため、多少普通よりは裕福な家で生まれ育った。


しかしそれ以外は、本当に平凡な男だ。


成績はここの学校ではぶっちぎりの最下位。


部活動でも50人近くいる同じ歳の奴らの中で、ほぼ底辺の実力。


団体メンバーに選ばれるのなんて夢のまた夢。


かといって他に何か特技があるわけでもなく、幼い頃から何かに打ち込んできたわけでもない。


見た目がいいわけでもないし、性格が明るくて友達が多いわけでもない。



天から二物も三物も与えられている奴らばかりがいるこの学校では、俺みたいな一般人は逆に目立ってしまい、皆をイラつかせる存在なのだ。

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