彼や私はどこへいく?
雛形 絢尊
第1話
彼は行方を眩ました。
何度も彼は私に着信をくれていた。
それにも気付かず私は彼を探している。
それは意味があるのか、
意味というのだろうか。
私は彼の助けを無視していたのにも
関わらず彼を探している。
改札前、書店、服屋、
広場のモニュメントの前、
そんなところをあてもなく探している。
彼がいない街をどう思うのだろうか、
と私は考えた。
彼がいない街は何かが変わるのだろうか。
人を亡くした時に思うことといえば、
その空虚な気持ちである。
浅はかながらな彼との付き合いでも、
彼は私によくしてくれた。
彼はどこにいる、彼はどこにいる。
喫茶店、階段、雑貨屋等、
私はありとあらゆる場所に目をつける。
そんなところを探しても
彼はいるはずがないと思い始めた。
私は何を以って彼に執着している?
彼はどこにいる、一体どこにいる。
どこからともなく人の声がする。
それはどこから聞こえてくるものなのか。
わたしは必死に耳を澄ませる。
人々の声がやたらに煩い。
彼だ、彼は何と言ってる、
何と言っているんだ。
目が覚めると私はいなくなっていた。
何もかもがなくなっていた。
なくなっていた、というよりも
なくなったと錯覚していたのだ。
私は何をしている、誰を探していて、
何に縋りつこうとしているのか。
どこを探しても見当たらない。
見つかりようもないものを
ただただ探している。
書いては消して、消しては書いて、
それをただただ
ただただ繰り返している。
そんな日々を連ねている。
消えそうな火を灯している。
ものを作って、また壊して、
来る日も来る日も夢を見切り立てている。
ずっと探している、ずっと探している。
当てもない旅をただ続けている。
彼や私はどこへいく? 雛形 絢尊 @kensonhina
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