第6話 逮捕

 谷牧の言う通り、樹たちはウォーミングアップが終わると、4対4を試合形式で行う。


 4対4をやり始めて早々に、谷牧は練習を止めた。


「おいおい、お前ら何やってんだよ!!」


 谷牧の怒りの矛先は快だ。


 快は智樹からパスをもらった。できればシュートをしたかったが、慧が壁になっていてシュートはできないと判断。拓斗にパスをした。


 それが谷牧にとっては気に入らなかったらしい。


「おい! 中山ディーノス……おまえはなんでシュートしなかった! 日本語がわからなかったのか!? だいたい、お前は日本人じゃないだろ!! 早く国に帰れ!!」


 慧と樹は谷牧を睨みつけた。


「快も大事な仲間です! それは差別じゃないですか!? 国とか関係ないだろ!! 皆、同じ人間だろ!!!!!」


 樹は思わず谷牧の胸ぐらを掴む。拳が出そうになって慧に止められた。


「やめろ! 樹!! これも暴力になっちまう」


「わかってるけど!! 許せないだろ!!」


 樹の怒りは爆発寸前。


 怒りが爆発しそうなのは、樹だけではないのだが。


 谷牧が樹に近づいてくる。


「あぁ!? バスケしたいなら俺に歯向かうな」


 谷牧は樹に拳を振り上げようとした。


 そこで快が叫ぶ。


「すみません! 俺が悪かったです!! 俺は……」


 慧が快の肩を抱く。


「快のせいじゃない!!」


 谷牧は慧と快のほうへと目線を向けた。


「あぁ、そうだ。わかってるじゃねぇか。お前が悪いんだよなぁ」


 谷牧はそう言うなり、快の顔をグーで殴る。


「快!!」


 拓斗が快のところへ駆け寄る。


 同時に谷牧は拓斗の鳩尾を蹴る。


「拓斗!!」


 樹は拓斗の体を支えようとしたとき、谷牧はまた快を殴る。


 何度も何度も。


 快はそのうち、血を吐き出した。


「快!!」


 慧はすぐに校長先生を呼んできた。


「先生! これはもう犯罪ですよね?」


 樹は校長先生に詰め寄った。


 校長先生は何も言わない。


 頼りない校長先生にイライラする慧。


「いい加減にしろよ!! 先生たちはどうして何もしないんだよ!!」


 慧はそう言うと、隠し撮りしていたスマホを持ってきた。


 救急車を呼ぶために。


 そして、慧は谷牧と校長先生に動画を見せた。


「何もしないなら、この動画を警察に見せる」


 谷牧はその動画がどうしたという顔で、慧の腕を掴もうとした。


 そのとき、警察がやってきた。


「現行犯逮捕する」


 警察が谷牧に手錠をかける。

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