第5話 隠しカメラ設置とバスケへの思い

 慧は翌日、学校に来るなり、樹に状況を説明した。


「きっと高宮コーチが動いてくれる」


 期待を込めているのか、慧は目を輝かせている。


 とにかく今の状況から抜け出して、バスケやるぞ。


 慧の気持ちが樹にも伝わってきた。


「わかった。高宮コーチのこと本当に信頼しているんだな」


 樹は慧の顔を見て思わず笑った。


 放課後、樹と慧で隠し撮りをするために、スマホを見えない場所に設置した。


「これでよしと」


 慧は刑事になった気分になっている。証拠を押さえたら逮捕する気満々だ。


 それだけバスケがしたいんだなと樹は感じた。もちろん、樹もバスケがしたい。


 いつものようにバスケ部全員が集まったところで、ウォーミングアップを始める。


「今日はすぐ来るのかな? あいつ」


 呟いたのは田畑貴たばたたかし。樹、慧とはクラスこそ違うが2年生。


「来なきゃいいのにな」


 貴の言葉に反応したのは、栗本達也くりもとたつや。同じく2年生。貴と達也はクラスも一緒。


「あいつがいなきゃ、バスケも楽しいんだろうな」


 貴と達也に同感したのは、伊田灯いだともる。灯も2年生だが、ひとりだけまた別のクラス。同じクラスにバスケ部はいない。


「拓斗と快は大丈夫か?」


 1年生の原智樹はらともき木野拓人きのたくと中山ディーノス快なかやまでぃーのすかいに声をかける。


 拓斗と快も1年生。しかし、クラスはそれぞれ別だ。


 谷牧はどういうわけか拓斗と快をターゲットにして、暴力や暴言を吐いている。


「逃げたいよね」


 拓斗と快の気持ちを代弁したのは、関戸美香せきどみか


 本当はバスケをやりたかったが、ケガの影響で本格的にやるのは難しいと言われ、男子バスケ部のマネージャーになった。


 樹の幼馴染で、クラスも樹と一緒。かなり仲も良い。


 だが、恥ずかしいようで樹も美香もなるべく距離を置いている。


  城伯高校のバスケ部はこれで全員。


 それぞれがバスケをしたいという思いと谷牧とはやりたくないという気持ちがあった。


「何、ベラベラと喋ってるんだ! ウォーミングアップ終わったら、4対4やれ!」


 いきなり怒鳴る声が聞こえてきた。


 谷牧のお出ましだ。


なぜ、暴力、暴言をして厳重注意で済むのか、樹は理解できなくて、谷牧を睨みつけた。

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