第14話 アイテムボックス
==カーゼル村==
ロイとメロムはテーブルを真向いにさせ、対面にて座っていた。
「さてと、まずは、俺の髪の毛が、なぜエメラルドグリーンだという事を説明しないといけないな」
「そうだな、そもそもなぜ俺の髪の毛は黒からエメラルドの緑のような色合いに変化していくのか謎であったよ」
「これはね、メロムの血の力が作用している。人を癒す力だ。それは自分自身にも作用出来る」
「ドラゴンアームだけの力ではないという事か、自己再生力が高いのは、俺の体の中にもメロムの血があるという事か」
「そうだね、どうやら君は俺の一族の遠いい血縁者のようだ」
「なぜ、ドラゴンの髪の毛も緑なんだ?」
「それはメロムの血とはドラゴン系譜の物なんだよ、ドラゴンは滅び、グレイスフリアへとなれの果てとなった。しかし、ドラゴンは人間に祝福を与えた。それがメロムと呼ばれている俺そのもの。俺の一族はドラゴンに祝福を与えられ、俺は代表としてメロムという名前を与えられたにすぎないよ」
「そうか、聞けて良かった。それと、文字や数字を見ると光っては見えるか?」
「いや、それはないな」
「そうか、いらぬことを聞いたな、さて、アイテムボックスの件なのだが」
「心当たりはあるよ」
その乱入者はドアを開けて入ってきた人物であった。
勇者セイリュウ。
数千年前の勇者にて、世界が滅びて再生する様を目撃して生きた1人の人物。
「場所はセドン国の宝物庫だと思う、当時の賢者サナディストの故郷だ」
「セドン国か、今どうなってるんだ?」
「俺が知り得るのはそこまでだ。それに俺はダンジョンに籠っていたから外の情報は知り得ないよ」
「それは俺も同じだ。ずっと銅像だったからね」
「困ったな」
「それなら、何とかできそうですよ」
冒険者ギルドのブラッドリーさんが声をかけてきてくれた。
「先程、1人の旅人がセドン国から命からがら流れてた商人がいます。彼から話を聞けるでしょう、今、呼んできます」
外に走って出て行ったブラッドリーさんを見送って、10分後には小太りの商人が入ってきた。
「わたくしはフルクタルと申します。セドン国は大変危険な土地となりました」
フルクタルという商人が説明を始めた。
① セドン国はグルングスガ王により統治されており、3人の花茨騎士団長の元運営されている。
② グルングスガ王はジーク王の弟であり、王位継承権はなかったが、無理やり王となる。
③ 本来の血筋の王子は赤子の時にセドン国から逃げるうんぬん。
④ セドン国の北にはグレイスフリアの里があり、グレイスフリア乗りが反乱軍を率いている。
⑤ セドン国の南には村が密集しており、奴隷狩りに合っている。
⑥ 異形の怪物と同盟を結んだ模様。
等々がフルクタルから説明してもらった。
なぜ、普通の商人がここまで詳しく知り得たのか、そこまで考える余裕が今はなかった。
フルクタルは命からがらセドン国から逃げてきたと聞いたが。
なぜか体のあちこちはぴんぴんしていて。
怪我や汚れが無かった。
それも今、さほど気に留める要素も無かった。
色々と教えてくれたフルクタルはしばらくすると、どこかにいなくなっていた。
「俺とデルで行こうと思う」
皆を集めて、会議を開いている訳だが。
ドリームとドーマスは頷いてくれた。
「俺はカーゼル村を頑強で最高な城に作り上げるから、がんばってこいよ」
「僕は夢の中で1つでも多く魔武具を造るから」
「なら、俺も行こう」
声を上げたのは勇者セイリュウであった。
「そもそも、俺はダンジョンから解放されて、自由の身となった。昔のように勇者として冒険するのではなく、1人の人として冒険をしてみたい、賢者サナディストの故郷も見てみたいしな」
「すみません、賢者サナディストとしての記憶がほとんどなくて」
「気にするなドリームよ、そなたは発明家ウェイバリアンとしての記憶を宿し、夢魔導士ドリームとして生きて行けばよかろう」
「夢魔導士ですか、それはそれでいい名前ですね」
ドリームが少しだけ照れ臭そうに頭をぽりぽりと掻きながらほっぺたを緩ませている。
「近くに、鉄王国があるな」
ジョド村長が懐かしそうに呟く。
「老齢の守衛、いや、魔賢者キリクは生きておるだろうかのう」
「魔賢者?」
「もし会う事があれば、よろしく言ってくれ、神速ルーム・クラフは健在だとな」
「話が見えんが」
ロイは少し意味の分からない表情を浮かべながら、思案する。
ルーム・クラフ、伝説の伝記に残っていた記憶があるが。
そういえばメロムとメロカが目覚めた時もそのような事を呟いていたはずだ。
「準備が整い次第、デルとセイリュウで旅立つ。その間カーゼル村を頼む皆」
【おう】
全員が合唱するかのように怒号を上げていた。
ロイは冒険者ギルドから出る。
後ろをデルが小さな体を一生懸命動かしながら。
「それにしても、カーゼル村もゴーレムだらけになって、城というよりかは国に変貌しようとしているな」
「ああ、それはそれで良いんだけどな」
「どうした、浮かない顔をして」
「この世界が滅びを辿るという事がまだ信じられない」
「そうか……」
「ここまで頑丈な村になってしまえば、異形の怪物達からの侵略もさほど怖くない。だが、別な国や村では大変な事になっているのは理解している。俺自身が強くなりすぎてしまって、異形の怪物達が雑魚にしか感じ得ない」
「ふふ、慢心か? いや違うな、お前はもっと強い敵を欲しているのだな」
「ああ」
「それなら安心しろ、おのずとやってくる。お前では手に負えない化け物達がな」
「きっと来るのだろう、だから、準備はしとくべきだ。魔武具、それを手に入れたい。ドリームが作った魔武具なら欲しいと思ったし、皆に配布して、1人でも命を長らえさせたい。そう願いたいな」
「もちろんだ。さてと、旅立つとするかのう」
「お前、そういえば大きくなったな」
「そうか? まぁ成長はしとるぞ、幼女から少女くらいにはな、そしてドラゴンの姿にもなれるようになっておる」
ドラゴン娘デルの体が、鱗粉のような緑色の光に包まれていく。
そこに現れたのは、1体の少し小さなドラゴンであった。
それでも大人3人は乗せられるくらいの巨体さで、エメラルドグリーンの鱗に包まれている。
かつて見たドラゴンの姿よりまだまだ遠く。
デルがまだ幼いドラゴンだという事を示唆しているようであった。
「乗るがよい、そして、勇者セイリュウも乗れ」
「明日出発じゃなかったのかい?」
勇者セイリュウが冒険者ギルドのドアを開けて出てくると。
肩に青龍の剣をぽんぽんと当てていた。
「ああ、時間が惜しい。行くぞ」
ロイとセイリュウはデルの少し小さなドラゴンの背中に乗ると。
遥か空へと飛び立った。
それを見送るかのように、メロムとメロカが肩を抱き合わせて、見つめていた。
一筋の流れ星が落ちた。
次から次へと落ちていく。
流星雨。
今日、この惑星の近くで沢山の流星が落ちた。
それは遥か遠いい、地球から流れてきた星達であった。
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