第13話 鉄王国=ゴブリンスレイヤー
==鉄王国==
ゴムザ・バーレットは村の入り口で座っていた。
まるで銅像のように座っており、体は筋骨隆々としている。
その体も今では岩神の鎧に包まれていた。
その隣にはナ・カロームと呼ばれる重鎮がいた。
彼は騎士のような恰好をしているも、鉄神の鎧に体を包ませていた。
額から一本角のような剣の形をした鉄の兜を着用している。
ゴムザの岩神の鎧は肌色と茶色の岩のようなごつごつとした鎧の姿であった。
「なぁ、ナよ、我らが守ってきた鉄王国は滅びたはずじゃなかったのか?」
「はい、そうであります。閣下」
「なぜ、こんなに、こんなに民が集まっているのだ!」
岩の形をした城。
それが鉄王国と呼ばれる城であった。
岩の形の城は破壊されて、10年以上が経過していた。
その村の名前をゴムザ村と呼ばれている。
かつてゴムザ閣下が守ってきた鉄王国の城が近い事から名付けられた。
ゴムザとナは滅びた鉄王国をゴムザ村から毎日のように見守ってきた。
時としては傭兵として、時としては農民として。
民の声を聞き、何が必用かを尋ねて、何が足りないかを考えて。
鉄王国は滅びてしまったが。
1人の人として生きていく事を決意していたはずだったのだが。
1人の老齢の守衛がやってきた。
彼は白い髭を生やしながら、しわくちゃな顔を浮かべさせながら。
ゴムザに従ってはや30年くらいたとうとしている。
ゴムザは40歳だが。10歳の頃よりよき友として従ってくれている。
だが老齢の守衛はずっと老齢で、いつ死ぬのか謎ではあったが。
「閣下、お待ちしておりました。民が立ち上がりました。ゴムザ村、ヘルカ村、タナザーク村、ジャイエオ村。エオード村、カナクシャ村。全ての民があなたを再び国王として、そして、鉄王国再臨の為立ち上がると決意しました。今この世界は謎の蛮族共に襲われております。閣下、立ち上がる時です」
「そうだな」
ゴムザ・バーレットは冷静に頷いた。
だが、心の中に響いている声が不思議と嫌な気持ちにさせなかった。
岩神と呼ばれる鎧の神様が、ゴムザの脳裏であらゆる事を呟いてくれる。
それが求めるのは圧倒的な強き敵。
それはどこまでも果て無くやってくるそうだ。
ゴムザは平和主義ではあるが、この力を試してみたいという気持ちにもなっている。
「ああ、そうだな」
「この、ナ・カローム、閣下に忠誠を誓います」
「ふぉふぉ、この守衛もじゃて」
「閣下!」
「閣下!」
民が1人また1人と膝をついた。
鉄王国。
星座と呼ばれる力でもってゴーレムを操る。
ゴーレムは要塞へと変貌していき。
ゴーレム要塞となり。
鉄王国を圧倒的な力へと示していく。
1人また1人と民が結束していく。
星座の魔法を扱って。
星の位置と地面の図を照らし合わせて魔法が起動し。
朽ち果てた岩の城は。
優美で荘厳で、逞しい巨大な要塞城へと変貌していき。
その終わりなき大きさは、雲の上にまで匹敵し。
真上の城の上から巨大な大砲が轟いた。
「轟かせよ!」
爆撃が発射される。
空の雲が一瞬で吹き飛び。
星が1つ吹き飛ぶ。
空はまばゆい輝きに包まれて。
宇宙は白く蛍の尻尾のように不気味に輝いた。
「立ち上がれ」
ゴムザ・バーレットの巨体が轟いた。
この日、鉄王国が立ち上がった。
それはメロムとメロカが目覚めた日と酷似していた。
★
==小人族村==
「おいおいおいおい、まじかよ」
ロム・ダーマは大剣【マインド】を背中に担ぎながら必死で走っていた。
紺色の髪の毛、包帯を至る所に巻き付けて、腕と足のケガからは血が滲み。
その隣を走る異形の緑小人族のグルブは笑っている。
「ロム、お前ばっかだなー何黒小人族に喧嘩しかけてんだよ」
「そもそも、グルブのせいだろうが、黒小人族の族長と喧嘩すっからだろ」
「そりゃーロムがサイコロ博打で不正を働いたからだろうがよ」
「うっせーな、そもそも、あいつら不正とか言ってっけど、ギャンブルっつのはそういうもんだろ」
「いんやー違うな―ギャンブルっつのは運勝負だぜ」
ロム・ダーマとグルブは悪友と言って良いほどの仲間意識で出来上がっている。
セドン国に向かうためにはお金が必用であった。
この小人族村には黒小人族、青小人族、赤小人族、緑小人族という種族が蔓延っている。
異業と言って良いほどの姿かたちは遥か昔のゴブリン族の成れの果てとも呼ばれているほどだ。
2人は遥か辺境の森の小人村にいる訳だが。
なぜ、小人族村に人間のロムがいるかと言うと。
「そもそも、お前の親父、ゼム・ダーマがセドン国につかまっちまったのがわりいぃな」
「親父はセドン国の大将軍だったんだから仕方ねーだろうがよ、そもそも親父はセドン国がやばいってんだから戻ってやったのに、なんで捕まらないといけねーんだよ」
「そりゃーお前の出自が関係してんだろうがよ」
「俺様の出自はただのガキだろうがよ」
「お前はセドン国の血筋に関係があるって、ゼムが酔っぱらって言っていたぞ」
「俺様は親父の息子で、ただの大将軍の息子だよバーカ」
「こんのやろおおおおお」
後ろから黒小人族の族長であるグーガが走ってきている。
「グーガさんよおおお、もう勘弁してくれよおおお」
「るせええええ、一度捕まれ、とういかクソガキはえーだんよ」
ロム・ダーマは今年で13歳になる、ただのクソガキでもある。
ただ。彼の額は包帯で巻かれており、そこには謎の三角形の文様が張り付いている。
ロムはそれが何を意味するのかを理解していない。
その時だった。後ろから追いかけてきている。黒小人族100名の真横から乱入者が現れる。
それは異形の人間の姿をした魔族と形容して良いだろう。
「なんだぁああ、あれは」
ロムが素っ頓狂な声を上げるが。
「あれは、まさかな、ゼムの伝記に残っていた。あの異形の形はクロウガーと呼ばれていた神様の配下達だった記憶があるんだが」
「そりゃーすげーのか?」
「すげーって話じゃねーしな」
「なら、ここは黒小人族に恩を売るのも手だぜ」
ロムは大剣【マインド】を背中から抜き打ちざまに。
1体2体と異形の人間種族を斬り伏せていく。
小さな体のどこにそのバカ力があるのかと思わせる程の豪胆ぶり。
1撃1撃がとてつもなく重たく。
異形の人間種族は真っ二つにされていく。
「撤退だー」
異形の人間種族達は1体2体と撤退を始める。
「すまねいな、これでチャラだぞ」
黒小人族の族長はにんまりと満足そうに笑って立ち去った。
小人族の長所の部分は恩に熱いという事。
彼等はゼム・ダーマに恩を貰っている。
だからと言ってロム・ダーマを贔屓する訳でもない。
「かっはっは、それにしてもおもろいな、こういうバケモンが、人間大陸にはいるんかな」
「そうだな、いるんだろうな、セドン国に行くためには船が必用だしな」
人間大陸。
ここは辺境の大陸。
小人族の大陸と言って良いだろう。
森に囲まれ、山に囲まれ、海に囲まれている。
小さな離島。
周りからの潮風はとても涼しく。
海は透き通って綺麗。
だが、ここには人間がロムだけしかいなかった。
「その時だった。空が真っ青に輝いた」
巨大な大砲が空を穿ち、星を爆散した。
空には無数の隕石が落下してきた。
それが赤黒い火花の花火のように散った。
1人また1人とやってくる小人族の族長達。
「なんだ?」
ロムがいぶかしく眺めていると。
先程立ち去った黒小人族の族長グーガも戻ってきていた。
赤小人族のセキガ、緑小人族のグルブ、青小人族のブルーブ、黒小人族のグーガがいる。
族長が4人揃っていた。
彼等は突如として目の前に忠誠の印を示すかのように、片膝を下した。
「ロム様、予言の時が来ました」
「はい?」
ロムは訳の分からない声で尋ねると。
「星が破壊され、世界が蒼く染まる時。セドン国王子、ロム・セドンが立ち上がると、小人族の神ゴブリンキングが申しておりました」
「ゴブリンキングって、もう死んだんじゃ」
「ダンジョンにて生きておられます。今すぐにお会いしていただく存じます」
赤小人族のセキガが丁寧な物腰で囁くように呟く。
「良いけど、案内してくれよ、なんだよ、今までクソガキ呼ばわりしていたのに、いきなり王子って、意味わからねーし」
ロム・セドン、されどロム・ダーマとして名乗る事を止めるつもりはない。
ロムの心の中を支配しているのはゼム・ダーマという1人の親父なのだから。
遥かな辺境の離島。
ゴブリン族の末裔が住むと言われる。小人族の村。
ゴブリンキングが待つダンジョンで、ロム・ダーマは立ち上がる。
ゴブリンキングの力を宿し、勇者、ゴブリンスレイヤーの誕生は間近であった。
4人の族長に案内されるがまま、祠のようなダンジョンに入っていく。
1人の老人の小人がいた。
彼はこちらを見ると。
不気味に笑い。
「やぁ、我らを滅ぼしたゴブリンスレイヤーよ、久しいな」
と笑ったのであった。
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