第53話 制圧任務②

「あんた!!次はわたしが相手したげる!!おら!!来い!!」

 レイナさんは、わたしが訓練で相手をした人。シュナイダー隊長以下、男性陣だけにだけど、わたしがその人との訓練が終わった後、無理やりといった感じで、自分の相手をさせる。

 その時のレイナさんのやり方は、明らかに訓練といった感じじゃない。本当に実戦といった感じのやり方だった。

 特にブリッツ曹長が、手痛い目に合っていた。「降参」と言っても、レイナさんは止めず、「あんたみたいな汗臭いヤツは徹底的にやる!!わたしの気が済むまでね!!」と言って、まさに自分の気が済むまで、ブリッツ曹長をバンバンと倒していった。

 そして。

「上坂。あいつ何とかしろよ」

「そうですよ。上坂少尉。レイナ中尉のこと、何とかしてくださいよ」

 ラング中尉とブリッツ曹長が、わたしにそう言ってきた。

「どうしてそんなこと、わたしに言うんですか?」

 わたしは、二人にそう言った。何でそんなこと、わたしに言うんだろ?

「やめておけ。そんなことをしてもやぶ蛇になるだけだ」

 シュナイダー隊長がそう言うと。

「コラッ!!あんたたち!!何瑞穂と話してんのよ!!」

 レイナさんが、ラング中尉とブリッツ曹長にそう言ってきた。

「瑞穂にそんなこと言ってやんな。分かってねぇみてぇだからよ」

「…だな…。…シルヴィアでも分かってんのに…。…鈍さに関しちゃシルヴィア以上か…」

 アイリスの言葉に、ラング中尉はそう言った。シルヴィアでも分かってる?一体何のことだろ?

 だけどレイナさんは、何故かわたしが相手になると、躊躇いがちになる。どうしてかは分からないけど。

「…しっかりしろしっかりしろ…。…訓練だからって手を抜くのは駄目…」

 パンパン。

 レイナさんは、わたしが相手になる度に、両方の頬を叩いて、何か呟いていた。

 そして。

「レイナ。手ぇ抜くなよ。手ぇ抜くなら、あたしらにも手ぇ抜け」

「うるっさい!!分かってるわよ!!黙れ!!」

 アイリスの言葉に、レイナさんはそう返した。これもわたしが相手になる度に繰り返してることだ。

 そんなこんなで格闘訓練が始まると、やはりレイナさんは、この部隊で格闘戦が一番強い人だというのが分かる。HWM戦で格闘戦をやるのも、それが理由なんだろうと思った。実際、この二週間の格闘訓練で、わたしが一番負かされているのはレイナさんだ。



 だけど。



 バタンッ



「…レイナさん…」

「な、何?」

「…手を抜きました?…」

 レイナさんを負かしたわたしは、レイナさんにそう聞いた。

「えっ!?そ、そんなことしてない!!してないよ!!」

 レイナさんは、顔を赤くしてそう答えてきた。

 訓練でレイナさんを負かす度、わたしはレイナさんにそう聞いていた。時々、何か不意にスキができるというか、レイナさんの力が弱まる時があるのだ。わたしはその度、それをついてレイナさんを負かしている。それでもレイナさんが、わたしを負かすことの方が多いんだけど、そういうのがある分、その時は手を抜いてるんじゃないかと思って、聞いてしまってるのだ。

 そしてレイナさんは、その度に顔を赤くしてそう答えてくる。一体ホント何なんだろ?



「おいレイナ。実戦ならやられてるぞ。しっかりしろ」

「うるさい!!分かってるわよ!!このハゲ隊長!!」

 シュナイダー隊長の叱責に、レイナさんはそう返した。これもその度に続いてることだ。



 そして最後に、HWMを使っての模擬訓練。



 そしてわたしは、ある意味一番知りたかったことを知ることになる。



 それは。











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