第52話 制圧任務①
あの歓迎会から二週間。
その間、出撃命令はなく、わたしは訓練の日々を過ごしていた。
その訓練の中でわたしは、メテオ・ビーストの人たちの力なりを、ある程度知ることができた。
もっとも訓練と実戦は別だ。だけどそれでも、一緒にやっていく部隊の人たちの力を、ある程度知ることは大事なことだ。
先ず、朝のランニング。
そこで分かったのは、ブリッツ曹長の持久力だ。とにかくこの人は、持久力が高い。こんなに持久力が高い人は初めて見た。
最初から前を走って、ランニングが終わる最後まで、それを維持している。わたしを含めた皆がへばっていても、この人は平気な顔をしている。
しかも。
「あいつ、朝練の前に筋トレしてんだぜ。それで最後までへばんねぇんだぜ」
ラング中尉によると、あの人は誰よりも早く起きて、筋トレを行って、訓練に参加するそうだ。それであんな持久力を維持できるなんて信じられない。
「最初の頃は、アイツに張り合ったりしたけどよ。もう止めた。負け認めるとかそれ以前に、あんなのと張り合ってたらキリがねぇ」
アイリスが、わたしにそう言ってきた。それくらいあの人の持久力が凄いということだろう。
「どちらにせよ、私は近くにいたくない。朝から汗臭い匂いなんて嗅ぎたくない」
シルヴィアが、グラウンドに倒れ込んでそう言った。因みに、この部隊で一番体力がないのはシルヴィアだ。朝のランニングとかで、わたしはそれを知った。
次に射撃訓練。
断トツで、ラング中尉が一番上手い。とにかく正確な射撃をする。
わたしたちよりも、遠くの方に的を設定して、それであんな正確な射撃ができる人を見たことがない。ブリッツ曹長とは、別の意味で凄い人だ。
「普通の的の設定だと、もの足りねぇっていうか、俺にとっては訓練にならねぇんでな。だからああいう設定にしてんだ」
ラング中尉が、自分の的の設定に対して、そう答えてきた。
その次に上手いのは、シュナイダー隊長とアイリスだ。シュナイダー隊長の方は、隊長だけあってもちろんだけど、アイリスもラング中尉に負けず劣らずといった感じだ。ロングライフルを使ってきただけのことはある。
「お前もかなりやる方だな。それだけ当てられるのは大したものだ」
「まぁ、あんな手間がかかることをするんだ。当然だろ」
シュナイダー隊長とラング中尉が、わたしの射撃を見て、そう言ってきた。ラング中尉が言った、手間がかかることというのは、アイリスとの模擬戦のことを言ってるんだろう。
その次に格闘訓練。
一番強いのはレイナさんだ。とにかく手加減がないというか、容赦がない。
「ほらほら♪もっとしっかりしなさいよ♪特に男共。もっと本気で来な♪そうでないと、いたぶりがいがないからね♪」
そんな風に言っては、相手をバッタバッタとなぎ倒していく。格闘戦で、HWMを倒していったりしてるからなのか、とにかくこの人は強い。
「お前を相手にすると、訓練どころか実戦だ。そういうのは実戦でやれ」
「そんなんだから、女として見れねぇんだよ。お前の恋愛対象云々関係無しにな」
「こういうのは男が手加減しなきゃいけないとか思うものですけど、こっちが手加減してもらいたい気分ですよ。本当に」
シュナイダー隊長以下、男性陣はそう言った。
「レイナ!!もう一回だ!!もう一回!!」
「ハッ。連敗記録更新したいわけ?アイリス♪」
アイリスは、レイナさんに何度もそう言って挑んでは、返り討ちにあっている。この二週間、それが何度も続いている。もっとも、わたしが配属される前からこうだったらしいけど。
「瑞穂もかなり凄いよ。レイナ程じゃないけど、隊長に何度か勝ってるし。レイナくらいだと思ってた。あれだけやれる人って」
シルヴィアが、わたしにそう言った。格闘訓練でも、シルヴィアはこの部隊で一番下だ。だけどシルヴィアを見てると、あまりこういうのには向いてない感じがある。本人も、あまり本気で取り組んでる様子はない。だけどやる気がないとかはない。それは朝のランニングでもそうだ。
だけど、引っ掛かることが一つある。
それは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます