第49話 浴場⑤
『…瑞穂って、肌綺麗だな…。…近くに行って確かめたい…』
レイナは、身体を洗っている瑞穂を見てそう思った。
『…それにスタイルいいな…。…わたし、見惚れちゃってる…』
でも自分が、瑞穂に見惚れている理由は、そんな理由じゃない。そんな理由だったら、極端な話、瑞穂が言ったことを認めることになる。
そんなので、自分は見惚れたりはしない。こんなことを言うのも何だけど、容姿やらでなら、瑞穂と同じか、それ以上の子と付き合ったりしたことはある。それには性的なことも含まれている。
見た目やら何やらで惹かれるような人間なら、「経験からくる雰囲気」とか「それだけの人数と付き合ってきた」とか思うだろう。実際、そんなので、自分に寄ってきた人間は何人かいる。特に男なんかがそうだ。
『女の場合なら諌めるくらいで済ませてるけど、男の場合は別。そんなヤツはボコボコにしてきた。徹底的なまでに』
それに何より自分は、瑞穂が可愛いとか綺麗とかで、持ってかれたりされていない。今もそうだ。肌が綺麗だとか、スタイルがいいとか思ってるけど、それで見惚れてるわけじゃない。
彼女の内面から感じる強い何か。それに自分は持っていかれ、こうして見惚れてしまっている。
でもそれが理由かと言われたら違う。やはり自分は、理由なんてつける必要なんてない何かに持っていかれ、それを感じている。
『…初めてづくしだな…。…今までとはホントに違う…。だから思わずわたし、あんなこと…』
すると。
身体を洗い終わって、頭を洗おうとした瑞穂が、翻訳機を耳に着けた。そして。
「レイナさん、顔赤いですよ。逆上せたんですか?」
瑞穂が、レイナにそう聞いてきた。
「う、ううん。そうかもね。わたしもそろそろ身体洗うわ」
「…そうですか…」
そう言って瑞穂が、翻訳機を外そうとすると。
「…瑞穂。…お前、マジで言ってんのか?…」
「何が?」
アイリスの問いに、瑞穂がそう答えると。
「…お前…」
「アイリス。瑞穂、ホントに分かってない」
「…そうみてぇだな…」
シルヴィアの言葉に、アイリスはそう答えた。
「…そろそろいい?…」
「ああ。なんか悪かったな」
「別に」
そう言って瑞穂は、翻訳機を外すと、頭を洗い始めた。
そしてアイリスとシルヴィアも、翻訳機を外すと、自分たちの身体を洗い始めた。
『…浴槽の時と同じで、瑞穂の両隣独占して…。あいつらが男だったら、ぶっ飛ばして、吊し上げにして、とことんまで蹴り倒すのに!!』
ゴシゴシゴシゴシッ。
瑞穂たちがいるところの向かいで、身体を洗っているレイナは、アイリスとシルヴィアを見てそう思ったのだった。
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