第47話 浴場③

「よぉ、レイナ。メアリーさんの説教は終わったのか?」

「うるさい。一番メアリーさんから、説教受けてるあんたが言うな」

 アイリスの言葉に、レイナさんはそう答えると。

「…まぁ、お説教っていうか、忠告みたいなもんよ…」

 そう言いながらレイナさんは、髪を弄り出した。

『…食堂に入ってきた時と、同じことしてるな…』

「忠告?何だそれ?」

「…うるさい…。…とにかくそういうことだから…」

 アイリスの問いに、レイナさんは、更に髪を弄りながらそう答えてきた。

 すると。

「レイナが、そんな仕草するの初めて見た」

 シルヴィアが、小さくそう言った。

 そして。

「まぁ、ギリギリセーフって感じ?ってか、何あんたら、瑞穂の両隣独占してんのよ」

 レイナさんは、アイリスとシルヴィアを見て、そう言ってきた。

「知るか。自然とこうなっただけだ」

「そう。なんかこうなった」

 アイリスとシルヴィアが、レイナさんにそう言うと。

「二人どっちか退きな。この貧乳コンビ」

「うっせぇ。胸でかいからって、貧乳とか言ってくんなっって言ってんだろ。このでか乳」

 アイリスがそう言うと。

「ハッ。あんたこそ。負け犬の遠吠え言ってくんじゃないって、何度も言ってんでしょ。この貧乳」

 レイナさんはそう言って、バサッと髪をかきあげると。

「悔しかったら、わたしみたいになってみなさいよ。まぁ百万年かかっても無理だろうけど♪」

「てんめぇ!!」

「…馬鹿馬鹿しい…」

 バシャッ。

 わたしは、小さくそう呟くと、浴槽から立ち上がった。

 そしてわたしは、レイナさんをじっと見ると。

『…確かに。スタイルがいいな。レイナさん…』

 誰もが目を引くような大きい胸。それを引き立たせるようなプロポーション。女豹って言われてる所以かな。

 だけど。

『…そんな自慢気に言って、何が楽しいんだか…』

 わたしはそう思った。

 そんなので人が寄って来ても、そんなの何の自慢にもならない。

 そんなので寄ってくる人なんて、結局その人の上辺とかに惹かれて、その人自身がどういう人なのかを、ちゃんと分かってない人なんだから。



 ……だけど……。



『…わたしがそれを、どうこう言えた義理じゃない…』



 ……だって、わたしも……。



 そしてわたしは、浴槽から出ると、レイナさんに近づいていった。



 そして。



「…一体、何人の人を垂らし込んだんだか…」



 わたしは、レイナさんにだけ聞こえるように、ボソリとそう言った。



 こんなこと言うのは駄目なのに。レイナさんが、まだどういう人なのかも分かってないのに。



 だけど。



 言わずにはおれなかった。



 そしてわたしは、洗い場の方に座ると。

「身体洗うんで。これ外すから話しかけないように」

 トントン。

 わたしは、耳に着けている翻訳機を叩いてそう言った。これを外したら、話しかけられても、何を喋ってるのか分からなくなるからだ。

 シャワー室で、頭と身体を洗った時も外してたけど、その時はわたし一人で誰もいなかった。でも今は違う。アイリスたちがいるし。

 すると。

「…うん。分かった…」

 浴槽に入ったレイナさんがそう言うと。

「おう。分かった」

「了解」

 アイリスとシルヴィアが、そう言ってきた。



 それを聞いたわたしは、翻訳機を耳から外して、それを近くに置くと、身体を洗い始めたのだった。




















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