第43話 新制服④

「…うん。ちょっとね…」

 レイナさんはそう答えると、髪を弄りながら、チラリとわたしの方を見た。

「さっきはどうも」

 レイナさんに、そう答えると。

「早く座ろ。いつもどこに座ってるの?アイリス」

「んっ?ああ、あそこのテーブルだな」

「そう。じゃあ、早く座ろ」

 そう言うとわたしは、アイリスの言ったテーブルに移動した。


   **************


「何かしたの?レイナちゃん?」

「…えっと、その…」

 メアリーの問いに、レイナはしどろもどろでそう言うと。

「…あの、瑞穂。何か言って…」

「何もされてないって」

 メアリーはそう言うと、レイナに夕食を差し出した。

「…何もされてないって…。それはそれでちょっと…」

 レイナは、夕食を受け取ると、小さくそう言った。

 すると。

「レイナちゃん」

「はい」

「あの子にはあの子で事情があるのよ。だから気を悪くするものじゃないわ」

 メアリーは、レイナの気持ちを察したのか。レイナにそう言った。

「だけど初めてね。あなたがそんな顔するの。瑞穂ちゃんを見てた時もそう。あんなあなたの態度、初めて見たわ」

 メアリーはそう言うと、受け取り口から身を乗り出して、レイナの耳に顔を近づけた。

 そして。

「…………………」

 レイナに、何か耳打ちした。

 すると。

「じゃあ、わたし行きますんで!!それじゃ!!」

 レイナは、顔を真っ赤にしてそう言うと、瑞穂たちが座っているテーブルの方に向かっていった。


   **************


「ここ座っていい?瑞穂」

 わたしとアイリス、シルヴィアが座っているテーブルに来たレイナさんが、わたしにそう言ってきた。

「どうぞ」

「…うん。ありがと…」

 レイナさんはそう言うと、わたしの隣に座ってきた。

「ずいぶん遅かったな。いつもなら、もっと早く来てんのに」

 パクパク。

 向かいに座っているアイリスが、おかずを食べながらそう言ってきた。

「…ちょっとね…」

「まぁ、別にいいけどよ。ブリッツにとっては災難だったろうけどな」

 アイリスがそう言うと、ブリッツ曹長が食堂に入って来て、受け取り口の方に向かっていった。

 そして。

「はい。ブリッツ君。筋トレお疲れ様」

「どうも」

 そう言うとブリッツ曹長は、メアリーさんから夕食を受け取ると、シュナイダー隊長とラング中尉が座っているテーブルに座った。

「てめえ、また晩飯前に筋トレかよ。だからレイナに痛い目合わされんだよ」

 アイリスは振り向いて、シュナイダー隊長たちが座るテーブルを見て、ブリッツ曹長にそう言うと。

「くれぐれも近づいて来ないで。汗臭い匂いがついて、ご飯が美味しく食べられないから」

 パクパク。

 アイリスの隣に座っているシルヴィアは、おかずを食べながら、振り向くことなく、ブリッツ曹長にそう言った。

「いつも言ってるだろ。腹ごしらえだ。それを汗臭いとか言うな」

「お前のは腹ごしらえってレベルじゃねぇんだよ。さっさと飯食え。こっちだって勘弁してもらいてぇんだからな」

 ブリッツ曹長の言葉に、ラング中尉がそう言うと。

「そういうことだ。さっさと食え。せっかく飲めるようになった酒が不味くなる」

 ゴクゴク。

 シュナイダー隊長は、お酒が入ってるだろうコップを口にしてそう言った。

「…分かりましたよ。全く…。これだから筋トレの素晴らしさが分からない人たちは…」

 パクパク。

「分かりたくもねぇよ。筋トレ馬鹿が」

 アイリスは、おかずを食べ始めたブリッツ曹長にそう言うと、再びテーブルの前を向いた。

 パクパク。

「…そういえば瑞穂、制服着替えたんだね…」

 おかずを食べているわたしに、レイナさんがそう言ってきた。

「はい。メアリーさんから渡されました。シャワーも浴びるようにと言われたんで、その時に着替えました。晩御飯の前に着替えるようにとも言われてたんで」

 わたしがそう言うと。

 ガンッ。

「…ウッソ…。…マジ…」

 レイナさんは、テーブルに顔をつけると、小さく何か呟いた。どうしたんだろ?

「そっか。じゃあ、風呂はどうすんだよ?」

「ちゃんと入る」

 アイリスの問いに、わたしはそう答えた。

 すると。

 スッ。

 テーブルに顔をつけていたレイナさんは、顔を上げると。

 クンクン。

 わたしに顔を近づけて、わたしの匂いを嗅いできた。

「…いい匂い…」

「ボディーソープとシャンプーの匂いですよ。それ…」

 レイナさんの言葉に、わたしがそう言うと。

「…違うよ…」

「何か?」

「う、ううん!!何でも!!ご、ごめん!!突然変なことして!!」

 パクパクパクパク。

 レイナさんはそう言うと、顔を真っ赤にしながら、おかずを口にしていった。

「…女豹に目をつけられた…」

 パクパク。

 シルヴィアは、おかずを食べながら、わたしを見てそう言った。

『えっ?女豹?』

 そして。

「瑞穂、気ぃつけろよ。そいつ、女豹って言われてっからよ。戦場でも。プライベートでも」

 パクパク。

 アイリスは、おかずを食べながら、レイナを見てそう言ってきた。

 どういうこと?それ?












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