第42話 新制服③

 脱衣所を出て、部屋に戻ってからしばらくした後、夕食の用意が出来たという声が、館内放送で流れてきた。声の主は、もちろんメアリーさんだ。

 わたしは、ある物を紙袋に入れると、部屋を出て、食堂に向かった。



「おっ。ウチの制服に着替えたのか」

 食堂に入ると、シュナイダー隊長が、わたしにそう言ってきた。

「はい。晩御飯が始まる頃には、着替えておいて欲しいと、メアリーさんに言われたので」

「なかなか、サマになってんじゃねぇか。瑞穂」

 後ろから現れた、アイリスがそう言うと。

「まっ、これでお前も晴れてウチの隊員ってことだな。上坂」

 その後ろから、ラング中尉が現れてそう言った。

「てめえ、ラング。割り込んで来んな。あたしが先に入ったんだ。ちゃんと後ろにいろ」

「んなこと知るか。てめえが退けばいい話だ」

「んだとぉ!?」

 アイリスとラング中尉が、そう言いながら睨み合っていると。

「お先に失礼」

 シルヴィアがそう言いながら、二人を尻目にするように、食堂に入ってきた。

「「てめえ!!シルヴィア!!」」

 アイリスとラング中尉は、二人揃って、シルヴィアにそう言った。

 すると。

「気にするな少尉。いつものことだ。相手にする必要はない」

 シュナイダー隊長は、受け取り口で、メアリーさんから夕食を受け取ると、わたしにそう言った。

「そうよ。瑞穂ちゃん。それよりサイズはどう?ちゃんと合ってる?」

 受け取り口から顔を出したメアリーさんが、わたしにそう聞いてきた。

「はい。大丈夫です」

 そう答えると、わたしは受け取り口の前に立った。そして。

「あの、メアリーさん。こんなところで渡すのも何なんですけど」

 わたしはそう言うと、メアリーさんに紙袋を差し出した。

 メアリーさんは、紙袋を受け取ると、その紙袋の中身を見た。

「…これって…」

「はい。今まで着てた制服です。そっちの方で処分してもらえますか?」

 メアリーさんにそう言うと。

「分かったわ。任せておいて」

 そう言うとメアリーさんは、制服が入った紙袋を近くに置くと、わたしに夕食を差し出してきた。

「すいません。こんなところで渡して。晩御飯が終わってからにしようかと思ったんですけど。早い方がいいと思って」

 そう言うとわたしは、メアリーさんから夕食を受け取った。

「いいのよ。そんなの気にしなくて」

 メアリーさんがそう言うと。

「そうだよ。んなもん気にすんな。あたしなんか、速攻で処分したからな。前の制服」

 アイリスがそう言うと。

「それに関しては、俺も同じだな。速攻で処分してやった。あんなもん」

 ラング中尉が、続けてそう言ってきた。

 すると。

「ちゃんと順番は守って。私が先。何気に先に行こうとしないで」

 シルヴィアはそう言うと、メアリーさんから夕食を受け取った。

「うるせぇ。人を追い抜いて、先に行ったヤツが言うんじゃねぇ」

「おかげで、こっちはこいつと同着だ。お前が現れると、自然とそうなっちまう」

 アイリスとラング中尉はそう言うと、メアリーさんから夕食を受け取った。

「二人とも止めなさい。ああ、それからラング君。しばらくはお酒は禁止。それでアイリスと喧嘩になったんだから。いいわね?」

「…禁酒かよ…。隊長の次は俺か…」

 メアリーさんの言葉に、ラング中尉はそう言った。

「俺の方は禁酒が解けた。ようやく酒が飲める」

 既にテーブルの席に座ったシュナイダー隊長が、ラング中尉にそう言ってきた。

「だからって飲み過ぎは駄目ですよ。隊長さん。次は、一生禁酒にしますからね」

 メアリーさんがそう言うと。

「だそうだ。隊長。一生禁酒になれ」

 ラング中尉はそう言って、シュナイダー隊長のいるテーブルの席に座った。

『そういえば、テーブルの配置が変わってる。というより、元に戻ったってところかな』

 食堂のテーブルの配置を見て、わたしはそう思った。あの時は歓迎会だったし、当たり前と言えば当たり前かな。

 すると。

「ほら。ボサッと突っ立ってんじゃねぇよ。あたしらも座るぞ。瑞穂」

 隣に来たアイリスが、わたしにそう言ってきた。

『…今までなら、どこか適当なテーブルで、一人で食べてたんだけど…』

 なんかそういうわけにはいかなそうだな。少なくとも今回は。

「そういえばレイナどうした?やけに遅いな」

 アイリスがそう言うと。

「うん。いつもならもう来てるのに」

 シルヴィアが、そう言ってきた。

 すると。

「退きなさいよ。汗臭いのよ。近づいて来んな」

 レイナさんの声がした。そして。

 ドカッ!!

 何かを蹴ったような音が聞こえた。

「レイナ中尉が遅いからでしょう。いつもならもう…」

 ブリッツ曹長の声がした。その声からして、レイナさんが蹴ったのは、ブリッツ曹長ってところか。

 ドカッ!!ドカッ!!

「うるさい。後から来て。わたしが入った後から。だけどしばらくしてからだよ。直ぐに入って来たら、その程度じゃ済まないから。いいわね?」

「…分かりましたよ…」

 更に蹴られたのか。ブリッツ曹長の、そんな声が聞こえた。

 そして。

「よぉ。遅かったな。レイナ」

 食堂に入ってきたレイナさんに、アイリスはそう言った。




































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