第41話 新制服②
「…瑞穂。…瑞穂ちゃん、か…」
わたしは、メアリーさんから渡されたメテオ・ビーストの制服を机に置くと、小さくそう呟いていた。
『…もう名前で呼ばれることなんてないと思ってたのに…』
そしてわたしは、床に座り込むと、じっと部屋の天井を見た。
「…そういう関係こそいらないんだよ…。…わたしには…」
そんな関係こそいらない。名前で呼び合ったりして、仲良くなるような関係なんて、わたしにはいらない。そんな関係を持つ資格なんて、もうわたしにはない。全てを失ったあの時から。
…なのに…。
『…アイリスやシルヴィアと、名前で呼び合うようなことになった…。メアリーさんは、まだいい。この宿舎の主みたいな人だし…』
…後は…。
『…レイナさんか…。…あの人、何で突然あんなこと…』
今のわたしに、あんなことしたって意味ない。あんなことされたけど、あらためて、わたしはそれを実感した。
「…一生受け続ける罰…。…まぁいいけど…。…わたしにとっても、都合がいい罰だし…」
そう言って立ち上がると、わたしはベッドの横に置いていた荷物を開けて、タンスやクローゼット、物置に、中に入れていた物を仕舞っていった。
そんなに多くはない。転属を繰り返してきたことを差し引いても、わたしの荷物はそんなに多くない。着替えやら日用品。後は私服くらいだ。
「さてと。とりあえずメアリーさんに言われた通りにしよう」
そしてわたしは、メテオ・ビーストの制服と下着、タオルを持って、部屋を出た。
シャァーーー-ッ。
わたしは、メアリーさんに言われた通り、浴場にあるシャワー室で、シャワーを浴びていた。
『昨日の夜は独房だったからな。夜になったら、またお風呂に入るつもりだけど、洗える時に洗っておこう』
そしてわたしは、シャワー室に置かれているボディーソープとシャンプーで、頭と身体を洗っていった。
……だけど……。
『…どんなに身体を洗っても取れないものはある…』
だけどそれは、誰の責任でもない。
誰かの責任にしても、結局それは、わたし自身の責任だ。
そう。わたし自身の。
シャワーを浴びながら、わたしはそう思ったのだった。
わたしは浴場を出ると、脱衣所で身体を拭いて、下着を着けていった。
その前に着けていた下着や制服は、洗濯機で洗っている。そろそろ終わる頃だろう。終わったら、乾燥機に入れよう。
そしてわたしは、下着を着け終わると、新しい制服を身に着けた。
新しい制服。
つまりこの部隊の制服。メテオ・ビーストの制服だ。
そしてわたしは、全身鏡で、その制服を着た自分を見た。
『やっぱり今までの制服とは違うな。黒を基調とした、アウトローな感じの制服。色んな意味で、今までの制服とは感じる雰囲気が違う』
だけど。
「…何だかこっちの制服の方がいいな…。今まで着てた制服より、こっちの方が好きかも。堅苦しい感じがしないし」
メテオ・ビーストの制服を着ている自分を見て、わたしはそう言っていたのだった。
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