第38話 宿舎案内④

 バンッ!!バンッ!!

「へぇ、結構上手いね。なかなかやるじゃん」

 射撃場の的に、拳銃の弾を当てていくわたしに、レイナさんがそう言ってきた。

 バンッ!!バンッ!!

「まぁ、養成所の補習が、主にこれだったこともあるんで。正式に軍に入ってからも、こっちの訓練はしてますから」

 的に弾を当てながら、わたしはそう答えた。



 養成所でも、銃の訓練は受けてたし、補習で受ける訓練が、主にこれだった。軍に入ってからも、部隊としての訓練としてやってるし、自分自身でも、自主的な訓練としてやってる。



 養成所の時の訓練と、軍での訓練で違うところと言えば、イヤホンを着けて訓練してるかしてないかだ。

 養成所では、イヤホンを着けて銃の訓練をしてたけど、軍ではそれを着けて訓練しない。

 というのも、耳に着けている翻訳機が、そのままイヤホンの役目を担ってるからだ。

 養成所で支給されていた翻訳機は、一般で使われている翻訳機と、あまり大差ない。軍に入ってから支給された翻訳機と違って、高い防音機能はない。だから養成所では、イヤホンを着けて訓練していた。



 HWMのパイロットだけやれたらいいけど、現実はそうはいかない。そんな時が何度もあった。ホントに。



 バンッ!!バンッ!!

 わたしは、拳銃の弾を全て的に当てると、拳銃を棚に返した。

 すると。

「気ぃ紛れた?」

 レイナさんが、わたしにそう言ってきた。

「そうですね。少しは。…ホントは、こんなので気を紛らわせるの駄目なんですけどね…」

 わたしがそう答えると。

「まぁね~。だけどわたしらの場合、そういうのしか思いつかないんだよねぇ…。…職業柄、ね…」

 レイナさんがそう言ってきた。

「…そうですね…」

 確かにそうだ。軍人っていう仕事につくと、そういうのしか思いつかない。スポーツ選手とかが、トレーニングで気を紛らわせるのと、ちょっと似てるけど、わたしたち軍人の場合とは、似て非なるものだ。あっちの方が、わたしたちよりは、ずっとマシだ。

「辛気臭くなるのは無し。休暇とか取れたら、気晴らしとか出来るしね。それでプラマイゼロってことで♪」

 レイナさんが、笑みを浮かべてそう言ってきた。

『…気晴らし…か…』

 そんなの出来たらいいんだけど、わたしにはそんなの出来ない。実際、休暇があっても、宿舎の部屋で一人で過ごしてるし。

『…あの頃なら、そんなの耐えられなかったけど、今はそんなの平気になってる…。…それはきっと…』



 孤独を選んだから。



 だから平気になってるんだ。



『…勝手だ。ホントに…』



 すると。

 グッ。

 レイナさんは、わたしの首に、腕を絡めてきた。

 そして。

「そろそろ上戻るわよ。最後のとっておきってヤツ?そこに案内してあげる♪」

 ニンマリと、笑みを浮かべてそう言うと、わたしの首に絡めていた腕を離した。

「だったら、ここに来る前に行けたんじゃ…」

「だからとっておきって言ったじゃん♪先にエレベーターのトコ、言ってるね♪」

 レイナさんはそう言って、足早にエレベーターの方に向かっていった。

「…ホント何なんだろ。あの人…。…まぁいいか…」

 小さくそう呟くと、わたしもエレベーターの方に歩き出したのだった。


   **************


「…ヤッバ。ホント、ヤッバ…。…持ってかれると、こんなになるわけ?わたし…」

 エレベーターの前に着いたレイナは、そこにしゃがみ込むと、顔を覆って、そう呟いていた。

 顔が熱い。きっと真っ赤だ。顔を覆いながら、レイナはそう思った。

「…我慢できるかな?…さっきだって、結構ヤバかったし…」

 レイナは、唇に指を当てながらそう言うと。

「…ホント初めてだ…。…わたしからしたいなんて思ったの…。…ホント初めてだ…」

 指で唇をなぞりながら、レイナはそう呟いていた。

















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