第36話 宿舎案内②

「ここが更衣室。制服とかに着替える時に使うトコね。そういえば瑞穂、ウチの部隊の制服、まだもらってないよね?」

 レイナさんが、わたしにそう聞いてきた。

『そういえば、この人たちの制服、他の部隊の制服とは違うな。何でも屋とか言われてるけど、特別遊撃部隊ってことだし、他とは制服が違うってことかな』

 レイナさんの着ている制服を見て、わたしはそう思った。



 基本的に、どの部隊も制服は同じ。違うところがあるとしたら、階級章くらいだ。上級将校とかになると、人によって色々違ってくるけど。



 わたしが着ている、この制服も入隊してから変わってない。変わったところがあるとしたら、階級章くらいだ。そんなのわたしにとっては、全然意味ないけど。



『何か独特な感じのする制服だな。黒を基調をした制服だし。だけどエリートっぽい感じがしない。何だかアウトローって感じがする。あらためて見ると』

 すると。

「何?ジロジロ見て?もしかして、こっち見ちゃってる?」

 レイナさんが、自分の大きい胸を両手で掴んで、ニンマリとした顔でそう言ってきた。

「…違います。独特な感じの制服だって思っただけです…」

 タッタッ。

 そう言うと、わたしは更衣室に入った。

「…ちょっと。瑞穂…」

「…そんなの自慢して、何が嬉しいんだか…」

 わたしは、チラリとレイナさんを見て、小さくそう言った。

「…イヤ、冗談だってば…」

「…いえ…。それより空いてるロッカーってどれです?」

 レイナさんにそう聞くと。

「ああ、そこら辺のロッカーなら、どれでも空いてるよ。好きなトコ使って」

 更衣室に入ってきたレイナさんが、わたしにそう言ってきた。

「そうですか。それじゃあ、ここにします」

 わたしはそう言うと、近くに目が入ったロッカーの前に立つと、ロッカーのドアの開閉スイッチを操作して、キーナンバーを登録した。

 この時代では、こういった類いのドアには、鍵は存在しない。それを使う人間が登録した番号が鍵になっている。

『わたしの部屋のドアにも、番号登録しとかないとな。アイリスとの一件で、まだしてないままだし』

 そして。

「登録終わった?」

「はい。終わりました」

 レイナさんに、わたしがそう答えると。

「さっきはごめんね。ああいうの嫌いだった?」

「…いえ。ただ…」

「ただ?」

「ああいうの、男の人にもするんですか?」

 わたしは、レイナさんにそう聞いた。

 すると。

「しないしない。するわけないじゃん。あんなので寄ってくるような男なんてお断り♪逆にいたぶりまくるわよ♪わたしの胸、触ろうなんてするようなヤツ♪食堂でも言ってたでしょ?男なんて、いたぶって楽しめたら、それでいいの♪」

 レイナさんは、笑みを浮かべてそう答えてきた。そういえば、そんなこと言ってたっけ。

「…どっちにしろ、そんなのわたしに見せたってしょうがないですよ。何も感じませんし…」

 わたしは、レイナさんにそう言った。



 そう。



 あんなの見たって何も感じない。



 今のわたしには。何も。



「…それはそれでショックなんだけど…。そんな風に言われると…」

 レイナさんは、ボソリと何か呟くと。

「…やっぱ今までとは全然違うってことかな…。…でなきゃ持ってかれてない…」

「何か言いました?」

「ううん、何にも」

 この人、所々でこんな風になるな。ホント何なんだろ?

「瑞穂の制服は、メアリーさんが渡してくれるだろうしね。それじゃ次行こ♪次♪」

「はい」

 


 そうしてわたしたちは、更衣室を出ると、次の場所へと向かっていったのだった。






















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