第35話 宿舎案内①
「レイナさん。そろそろ離して欲しいんですけど」
わたしの腕を掴んだままのレイナさんに、わたしがそう言うと。
「あっ、ごめん」
レイナさんはそう言って、わたしの腕を離すと、その手をじっと見つめた。
そして。
「…ヤバッ。ちょっと握っただけなのに…」
小さく何か呟いた。その顔は、また少し赤い顔をしてる。
「レイナさん?」
「ううん、何でもない」
レイナさんは、慌ててそう言ってきた。ホント何なんだろ?この人。
『…まぁいいか…』
そして。
「じゃあ、案内したげるね。瑞穂♪」
「はい。お願いします」
「あの、レイナさん」
「んっ?」
「聞きそびれてたんですけど、その任務の方、どうなったんですか?」
わたしは歩きながら、レイナさんにそう聞くと。
「ああ、万事解決♪その領主の敷地内のありとあらゆる建物、跡形もなくぶっ壊してやった。クレインシザードの方も、一機残らず破壊してやった。そして最後の仕上げに、領主の屋敷を木っ端微塵♪ああっ♪爽快だったわぁ♪自分の敷地内の建物、容赦なく破壊されて、自分の私兵がなす術もなく全滅させられて、挙げ句の果てに、屋敷が灰も残さずにぶっ壊された時の領主の顔♪今思い出しても、ゾクゾクする♪」
レイナさんは、笑みを浮かべて、そう答えてきた。
「でもそれで解決になるんですか?ラング中尉が言ってたみたいに、また領主に返り咲いたりとか…」
「ああ、大丈夫大丈夫♪その後、領民が一気に立ち上がって、そいつに反抗してきたからね。今までずっと弾圧されてきて、その機会がなかったからってね。わたしらが来る前の連中は、それ知ってても、大して何もしないで、上からの指示待ちって言って、実質見て見ぬふり。最初はその連中に期待してたらしいんだけどね。反抗の機会がやってきて、領主を一気に追い落としにいけるってさ」
わたしの言葉に、レイナさんはそう答えると
「わたしらは違うからね。上からの指示なんか待つ気なんて、さらさらない。こっちのやりたいようにやらせてもらう。隊長も「遠慮なく叩き潰す。腐った膿は徹底的に取り除く。もっとも、その後は領民たち次第だがな。本当の意味で、そこから立て直すのは、そこに暮らす領民たちだ」って言ったしね。まぁ確かに、その後はあの人たち次第だね。それに関しては、わたしらが、どうこう出来ることじゃないし」
更にそう言ってきた。
「確かにそうですね。その後は、本当の意味で偉い人たちが、その人たちの力になって、その人たちの復興の手助けをしてあげないとですね」
「だね。まぁあの一件で、領主と仲良くしてたお偉いさんも、領主共々、糾弾されて、辞任になるだろうって、副長も言ってたし。そうなる材料も、領民たちの決起で一気に手に入ったらしいしね。その辺の根回しやらは、副長がやるでしょ。そういう仕事は、副長得意だからね。大丈夫でしょ」
「そういえば、その副長さんとは、まだ顔合わせしてないな。その仕事で、今日は来なかったんですか?」
わたしがそう聞くと。
「それもあるけど、それがなくても来ないって。『自分は静かな休暇を楽しみたい人間だ』って、いつも言ってるしね。大佐と違って、頭固いっていうか、堅物っていうか。まぁ大佐の補佐役には、あの人みたいな人が適任だって、メアリーさんも隊長も言ってたわね。大佐も、あの人のことは信頼してるしね。だから今回の任務も、あの人に任せたんだしね」
レイナさんは、そう答えてきた。
そして。
「そんなことより案内案内。ええと、先ずは近いトコで更衣室かな」
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