第32話 歓迎会⑦
「歓迎会の席で言うのも何だが、任務ご苦労だったな。さぞつまらん戦いだっただろう。あんな下らんものに、長々と時間を費やしている連中の気が知れん」
「全くですな。さっさと終わられるでしょうに。これだからつまらんことに拘る連中は…」
ディアナ大佐の言葉に、シュナイダー隊長はそう答えた。
「あの」
「何だ?少尉?」
「その任務と何なんですか?」
わたしは、大佐にそう聞くと。
「つまらん任務だ。私が前線で指揮を取る必要のない程のな」
大佐は、わたしにそう答えてきた。
『そういえば、前線で指揮を取るようにしてるって言ってたっけ』
「わたしの着任のこととは、関係なくですか?」
「そうだ。もっとも貴官の着任の件は、突然だったがな。まぁそれが無くとも、わたしが出るまでのないような任務だ」
「そうなんですか?」
まぁ確かに、あの出撃から数日で、この部隊に着任が決まったし。突然と言えば突然か。
すると。
「そういえば瑞穂って、何でウチの部隊に配属になったわけ?何かやらかしたの?」
パクパク。
レイナさんが、おかずを食べながら、わたしにそう聞いてきた。
「何かやらかしたから、ここに来たんだろ。あたしら皆、そうだろうが」
バクバクバク。
「あんたには聞いてないでしょ。瑞穂に喧嘩吹っ掛けた、あんたがそれを言うな」
おかずを、ガツガツと口にしながら言ってきたアイリスに、レイナさんはそう言った。
「ああ、その件なら大佐から聞いた。タトルコス六機を、たった一機で倒したそうだな。しかも隊長の命令も無しに、それをやったそうじゃないか」
隊長が、わたしにそう言ってきた。
「はい。まぁ。やっぱりそれが関係してますよね」
わたしが隊長にそう聞くと、隊長は、大佐に目をやった。そして。
「構わん。大尉」
大佐が、そう答えると。
「そうだな。大佐の話によると、その隊長、その戦闘があった翌日、司令官に文句言ってきたらしくてな。『あいつを、どこかの僻地に追いやって欲しい』って言ったそうだ」
隊長は、わたしにそう言ってきた。
「ハァッ?何?その隊長?何様?」
レイナさんがそう言うと。
「確かにな。どうもその隊長、士官学校出身で、親も相当な家柄ってことでな。それでだな」
『ああ、やっぱりそうだったか』
隊長の言葉を聞いて、わたしはそう思った。思ってた通りだ。予想通りで、驚く気にもならない。
「くっだらない。わたしだったら、そんなヤツ、椅子に縛りつけて、蹴りまくって、頭踏みつけて、そんな口叩けなくしてやってるわよ。ゾクゾクするのよねぇ♪そういう、いけ好かないヤツ、いたぶったりするのって♪」
レイナさんが、笑みを浮かべてそう言うと。
「…ドS…」
ゴクゴク。
シルヴィア伍長は、ジュースを口にして、小さくそう言ってきた。
「だけど、だからってそういうわけにもいかん。何にせよ、そっちのおかげで部隊の全滅が免れたもんだしな。それに何やかんや言っても、お前さんは、エースパイロットと呼ばれてるからな。いくら自分の部隊に着任したばかりとはいえ、そう呼ばれてる人間を僻地に追いやるわけにもいかん。何よりそこまで追いやられる程の命令違反を犯した経歴がないからな。そこまでするだけの理由が無い」
隊長は、そこまで言うと。
「だがな、ここでのエースは…」
「大尉、そこまでだ。それ以上は黙れ」
この後の展開を察したのか。大佐は、隊長にそう言った。
『やっぱり。昨日、大佐が指令室で言ってたのって、そういうことか』
昇進には興味ないけど、エースに関しては違う。
大佐が来る前の、あの言い争いを見てて、察しはついてたけどね。
「それで、こちらに貴官の話を持って来たというわけだ。まぁ遅かれ早かれ、こちらに配属になっていただろうだな。貴官が、これまで配属されてきた部隊で行っていた単独行動。それらを見たら、そんな扱いきれないようなヤツを置いておける部隊は、ここしかないと判断されていたことだろうだしな」
大佐は、わたしを見てそう言ってきた。
『なるほど。どっちにしろ、ここに配属されることになってたわけか。わたし』
「…まぁ、わたし的には良かったかな…」
「何か言いました?レイナさん?」
「ああっ!!ううん!!何でもない!!何でもない!!」
わたしの言葉に、レイナさんは慌ててそう言ってきた。
『また何か顔赤い。何なんだろ?ホント?』
レイナさんのその様子を見て、わたしはそう思ったのだった。
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