第31話 歓迎会⑥
「じゃあ皆、乾杯するわよ。カンパーイ♪」
「カンパーイ♪」
メアリーさんの号令と同時に、皆が一斉にそう言った。
「…乾杯…」
わたしも、小さくそう言った。
すると。
「瑞穂。あんたの歓迎会なんだしさ。もっと大きい声出そうよ♪」
レイナさんが、わたしにそう言ってきた。
「…いえ、こういうのはちょっと…」
「いいじゃない。ほら、早く食べましょう」
メアリーさんはそう言うと、テーブルにおかずを並べていった。
「飯だ♪飯♪いっただまーす♪」
バクバク。
そう言うとアイリスは、目の前のおかずをガツガツと口にしていった。
「ほら。アイリス。いつも言ってるでしょう?ちゃんとお行儀良くなさい」
「うっせぇなぁ。いっつもいっつも。こっちは独房帰りなんだっつの」
メアリーさんの言葉に、アイリスはそう答えてきた。
そして。
「いただきます」
わたしが、自分の目の前のおかずの前に、手を合わせてそう言うと。
「あら。礼儀正しいわね。アイリスとは大違い」
メアリーさんが、わたしにそう言ってきた。
「いえ、わたしの歓迎会ですから」
パクッ。
わたしはそう言って、自分の前のおかずを口にした。
「…美味しい…」
わたしは、思わずそう口にした。一体いつ以来だろ。こんなこと口にするのは。
「でしょ?メアリーさんの料理は格別なのよ」
パクパク。
レイナさんが、自分のおかずを口にしながらそう言ってきた。
「ああ、そういえば」
「んっ?」
「大佐は来ないんですね。まぁ当たり前ですけど」
わたしは、レイナさんにそう聞いた。いくら歓迎会でも、司令官なんだし、こんなところに来るなんてあり得ないけど、そう聞いてしまった。
『…もう口にすることない言葉、口にしたからかな…』
すると。
「呼んだか?少尉」
「た、大佐!?」
ディアナ大佐が、わたしの後ろから現れてそう言ってきた。
そして。
「大佐。いつもながら遅いっすね。もっと早く来れたでしょう?」
ラング中尉が、大佐にそう言うと。
「貴様らの下らん歓迎に付き合うつもりはない。いつも言っているだろう」
大佐は、ラング中尉にそう答えると、空いている席に座った。
「はい。大佐。いらっしゃい」
そう言うとメアリーさんは、大佐の分のおかずと飲み物を、大佐の前に置いた。
「…えと、お、おはようございます。大佐
…」
そう言ってわたしが、敬礼しようとすると。
「そんなものは要らん。お前の歓迎会なんだ。さっさと飯を食え」
大佐は、わたしにそう言ってきた。
「は、はい!!」
パクパク。
そう言うとわたしは、自分のおかずを口に入れていった。
『…やっぱり美味しい…』
おかずを食べながら、わたしはそう思った。ホントにいつ以来だろ。こんなこと思うのは。
『…歓迎会だからかな…。…わたしには、もう一生縁のないものだって思ってたし…』
そう。わたしには歓迎会なんて、もう一生縁のないものだって思ってた。
こんなことをしてもらうことも、こんなことをすることも、一生無いだろうって思ってた。
全てを失ったあの時から。
ずっと。
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