第30話 歓迎会⑤

「隊長だからって、エース気取んなって、何度も言ってんだろ。あんまそんなこと言ってっと、隊長から引きずり下ろすぞ」

 ラング中尉が、シュナイダー隊長にそう言うと。

「お前こそ、隊長に向かって、いつもそんな口を叩きおって。お前ごときが、エースを名乗るなど百年早い」

 ガンッ!!

 シュナイダー隊長は、ラング中尉の額に、自分の額をぶつけてそう言ってきた。

「うるせぇ。このハゲ!!」

「ハゲじゃない!!剃ってるんだ!!何度も言わせるな!!」

 すると。

「隊長もラングもエースじゃない。エースは私」

 シルヴィア伍長が、二人にそう言うと。

「てめえ!!シルヴィア!!てめえのどこがエースなんだよ!!てめえなんざ、後方支援と盾役じゃねぇか!!そんなヤツが、エース気取んなって、何度も言ってんだろ!!」

 アイリスが、彼女にそう言ってきた。

「本当のエースは目立たないもの。皆を影から支える。それが本当のエース」

「てんめぇ!!」

 そして。

「バッカらし。ハゲのおっさんとキザ野郎と、貧乳のチビ二人がエース?そんなのがエースだったら、他の部隊に舐められっでしょ。わたしがエースでいいのよ。そんな連中、片っ端からいたぶってやるし」

 レイナ少尉がそう言うと。

「ハァッ!?てめえのいたぶるは、男限定だろうが。このドSが!!」

「男なんて、いたぶって楽しめたら、それで満足なの。悪い?」

 アイリスの言葉に、レイナ少尉は、笑みを浮かべてそう答えた。

「あの」

「んっ?」

「あの人はいいんですか?レイナ少尉」

 わたしは、ブリッツ曹長の方を見て、レイナ少尉にそう聞くと。



「アイツは論外!!」



 レイナ少尉を含めた全員が、一斉にそう言ってきた。

「…いいですよ。それで…」

 そう言われたブリッツ曹長は、何だか拗ねたような顔で、ボソリとそう言った。

「ってかさ。さっきも言ったじゃん。レイナでいいって。少尉は無し」

 レイナ少尉は、ズイッと顔を近づけて、わたしにそう言ってきた。

『…いつもなら、そんなの無視するか、はぐらかすんだけど…』

 何だか、そういうの出来ないって感じがする。この人たちのやり取り見てると。

 …そして…。

「…レイナ…さん…」

 わたしは、レイナ少尉にそう言った。

「…さん付けか…。…まっいっか…。じゃあ、あらためてよろしくね♪瑞穂♪」

 レイナ少尉。いや、レイナさんは、笑顔を浮かべてそう言ってきた。最初のところ、何か残念そうな顔してた気がするけど。まぁいいか。



『…人と関わりたくないのに…。…関わったりすべきじゃないのに…』



 …だから孤独を選んだのに…。…アイリスといい、この人といい…。…やめてよ…。…ホント…。



 すると。



「全く。いつもいつも、そんなことで争って。せっかくの歓迎会を台無しにする気?今回に限ったことじゃないけど」

 メアリーさんが現れて、皆にそう言うと。

「飲み物持って来たわよ。もうそんなのはお開き。ちゃんと歓迎会を始めるわよ」

 そう言うとメアリーさんは、わたしたちの前に飲み物を用意していったのだった。















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