第29話 歓迎会④

「挨拶が遅れましたが、上坂瑞穂少尉です。これからよろしくお願いします」

 食堂に着いたわたしは、敬礼してそう言うと。

「まぁな。こちらも挨拶が遅れた。この歓迎会の前に、こいつが手荒い歓迎をしてすまなかったな」

 スキンヘッドの男の人は、アイリスの頭をクシャクシャとしてそう言ってきた。

「うっせぇなぁ」

 アイリスがそう言うと。

「そんな挨拶はいいだろ。さっさと座れよ」

「ラング、俺の台詞を取るな」

「ハイハイ。隊長」

 ラングと呼ばれた男の人は、スキンヘッドの男の人にそう言った。

『この人が隊長?』

 すると。

「まぁいい。座れ少尉。歓迎会の主役が、いつまでも立ってるもんじゃない」

「はい。じゃあ」

 隊長と呼ばれた、スキンヘッドの男の人の言葉に従って、わたしは近くの席に座った。

『…主役…か…』

「先ずは隊長の俺から自己紹介させてもらう。俺は隊長のギルガ・シュナイダー大尉だ。シュナイダー隊長と呼んでくれて構わん」

 ギルガ・シュナイダー大尉。

 そう言ってシュナイダー隊長が、席に座ると。

「俺はラング。ラング・ニルヴァール中尉だ。よろしくな」

 ラング・ニルヴァール中尉。

 そう言うと、ラング中尉も席に座った。

「自分はブリッツ。ブリッツ・シュタイン曹長です。よろしくお願いします」

 ブリッツ・シュタイン曹長。

 そう言って、ブリッツ曹長が席に座ろうとすると。

 ドカッ!!

「そこはあたしの席だ。勝手に座んな」

 アイリスがそう言って、ブリッツ曹長を蹴り飛ばして、その席に座った。

「そんなのいつ決まったんだ。決まってないだろう」

「たった今決まったんだよ。たった今」

 ブリッツ曹長の言葉に、アイリスはそう言った。

「階級は同じでも、自分の方が年上なんだぞ。なのにお前は…」

「うるせぇ。さっさと別んとこ座れ。この筋トレ馬鹿」

「…くそっ。全く…」

 ブリッツ曹長がそう言って、別の席に座ろうとすると。

「ブリッツ、いつも言ってるでしょう。私の近くに座ろうとしないで。端の方に座って。汗臭い匂いが付くから」

 すでに席に座っている、アイリスと同じくらいの背丈の女の子が、そう言ってきた。

『アイリスと同じくらいの歳かな。あのショートヘアの子』

 その女の子を見て、わたしがそう思っていると。

「初めまして。私、シルヴィア・アリスティア伍長。これからよろしく」

 シルヴィア・アリスティア伍長。

 その子は、無表情と言えるほど冷静な顔で、わたしにそう言ってきた。

「シルヴィア。挨拶はいいけど、こっちの話も…」

 すると。

「うるさい。さっさと端っこ行きなさいよ。端っこ。あんたの指定席でしょ。筋トレばっかやってる汗臭いあんたには、そこがお似合いなの」

 レイナ少尉がそう言って、わたしの隣の席に座ると。

「ああ、あらためて自己紹介するね。わたし、レイナ・フローレンス少尉。レイナって呼んでくれていいよ♪」

 わたしにそう言ってきた。

「ハァ…」

 …何か昨日と態度違うな。何となくだけど…。

「…あの、自分の話聞いてます?」

 ブリッツ曹長がそう言うと。

「早く端の席に座って。汗臭い匂いが付く」

「早く端っこの席行きなさいよ。あんたの汗臭い匂いなんか嗅ぎたくないんだから。さっさと行かないと、逆さ吊りにして蹴り飛ばすわよ。前にそうされたの忘れたの?」

 シルヴィア伍長とレイナ少尉が、そう言ってきた。

『レイナ少尉、何か最後、凄いこと言わなかった?』

「…分かりましたよ…」

 そう言うとブリッツ曹長は、端の席の方に座っていった。

 そして。

「…こっちの匂いは嗅ぎたいけど…」

 レイナ少尉は、小さく何か呟いた。

「何か言いました?」

「あっ!!ううん!!何でもないよ!!」

 レイナ少尉が、慌てた顔でそう言ってきた。

『何かちょっと顔赤くない?…まぁいいけど…』

「アイリスの方はいいだろ。もう自己紹介は済んでるようだしな。ああ、それから言っておくことがある」

 シュナイダー隊長はそう言うと。

「俺が、このメテオ・ビーストのエースだ。覚えておけ」

 すると。

「違う!!」

「ちげぇ!!」

「違う」

「違うっての!!」

 ブリッツ曹長を除く、他の皆はそう言うと。

「俺がエースだ!!」

「あたしがエースだ!!」

「私がエース」

「わたしがエースだっての!!」

 一斉にそう言ってきた。

『何?何なの?これ?』














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