第28話 歓迎会③

「ようこそ!!メテオ・ビーストへ!!」



 立ち込めていた煙が失くなってきた後、そんな声が一斉に聞こえた。

「何なの?これ?」

「ウチの新入りに対する歓迎だ。あたしん時も、これやられた」

 わたしの後から、宿舎に入ってきたアイリスが、わたしにそう言ってきた。

『さっきのアレって、手榴弾だよね?火薬じゃなくて、スモークが入ってたみたいだけど。この翻訳機じゃなかったら、耳塞いでた』



 一般的に出回っている翻訳機には、基本的に防音機能は備わっていない。翻訳機能のこともあって、そういった類いは付いていないことが多い。

 だけど、軍から支給されている翻訳機には、全て防音機能が備わっている。それもかなりしっかりしたものが。



 理由としては、白兵戦等の際の周囲の爆音への対策のためだ。

 HWMが戦場の主役になったからって、そういった類いの戦闘が無くなったわけじゃない。養成所でも、そういう訓練は受けたし、わたしも軍に入ってから、そういった戦闘を何度も経験してる。



「…アイリス…」

「んっ?」

「耳塞げとか言いたいとかって言ってた理由ってこれ?」

 わたしがそう聞くと。

「そうだよ。いちいちウゼェだろ、こんなの。いくら防音機能あるからってよ。あたしん時、そう思ったしな」

 アイリスが、そう答えた。

『…ウザイ…ね…』

 すると。

「リアクションが薄いな。まぁシルヴィアの時よりはマシか。こいつん時は、マジ、リアクション無しだったからな」

 わたしの前にいる人たちの一人が、アイリスと同じくらいの背丈の女の子の頭をワシャワシャと撫でてそう言ってきた。

『何かキザっぽい人だな。もしかして、この人がアイリスの言ってた人かな?確か、ラングって名前らしいけど…』

 女の子の頭を撫でている男の人を見て、わたしはそう思った。

「余計なお世話」

 女の子は、その男の人にそう言うと。

「リアクションって言ったら、ブリッツが一番凄かった。思わず腰抜かしてたし」

 女の子は、一人の男の人を指差してそう言った。

「だってそうでしょ?いきなりだよ。いきなり。びっくりするに決まってるでしょう」

 ブリッツと呼ばれたその男の人は、女の子にそう言った。

「だらしないことを抜かすな。あんなもんで、腰抜かすお前が悪い」

 ガッチリとした体型のスキンヘッドの男の人が、その人にそう言うと。

「だな。筋トレ馬鹿のクセによ」

 アイリスも、その男の人にそう言った。

 そして。

「まっ。こんくらいでいちいち驚くようじゃ、こっちも困るしな。あんだけあたしとやり合ったヤツが、こんくらいで驚いてちゃ、こっちの顔が立たねぇ。だろ?瑞穂」

 ポンポン。

 アイリスが、あたしの背中を叩いてそう言ってきた。

 すると。

「…何?…何でいつの間に、そんな仲良くなってんの?」

 レイナ少尉が、わたしとアイリスの前に現れてそう言った。何だろ?何かムッとした顔してる感じがする。

「拳を交えたからだな」

「…やめて…。…別に仲良くなってない…」

 アイリスに、わたしはそう言った。

 名前で呼び合う感じにはなったけど、仲良くなったとかとは別だ。わたしはそんなの望んでない。望んで欲しいとも思ってない。



『…だって、わたしは…』



 パンパン。



「ほら、その辺にしなさい。みんな」

 メアリーさんが現れて、手を叩いてそう言うと。

「食堂の方に移動しましょう。ご馳走の用意できたわよ」

 そして。

「よし。それじゃ行くか。自己紹介はそこでだ。いいな?少尉」

 スキンヘッドの男の人が、わたしにそう言ってきた。

「はい。それで構いません」

「よっしゃ!!じゃあ、行くぞ瑞穂!!昨日は独房の飯だったからな!!たっぷり食うぞ!!瑞穂!!」

 パンッ!!

 アイリスが、さっきよりも強く、わたしの背中を叩いてそう言った。

「…あんなに突っかかっていったクセに…。…何よ。その変わり様…」

 レイナ少尉がそれを見て、小さく何か呟いた。さっきよりも心なしか、ムッとしたような感じの顔になってる。

『…まぁいいか…。…そんなの…』



 そうしてわたしたちは、食堂の方へと移動していったのだった。













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