第21話 模擬戦⑨
「クッソ!!あんのヤロウ!!」
グイクイッ!!
コントロールスティックを動かしながら、アイリスはそう言った。
モニターには、さっきの脚部のダメージが映し出されている。
『右脚部損傷。スラスター出力低下』
「ちっきしょーっ!!」
アイリスは、モニターに映されている、右の脚部のダメージを見てそう叫んだ。
模擬戦で使われる模擬弾は、HWMに当たった場合、四散して砕け散る。自分が放った弾も、瑞穂が放った弾も、当たったのは地面だが、そうやって四散して砕け散っている。
HWMに模擬弾が当たった場合、その威力に合わせたダメージが、データという形で現れ、そのデータに合わせたダメージが、HWMに加えられ、実戦と同様のダメージにされる。これだ普通のライオットの足なら、戦闘不能になってるところだ。
「戦闘が出来ねぇわけじゃねぇ。だけどこれじゃ、動きは半減しちまう」
戦闘不能なら、モニターにそれが表示されて、模擬戦終了になっている。それが表示されないということは、戦闘は可能ということを示している。
『あいつ、それを計算してやがる。アレが致命傷にならねぇって分かってやりやがった。こっちの機動力を半減させるのが目的ってか?』
そして。
「…ホントに日本人かよ。あいつ…。平和ボケして、お気楽に過ごしてるような国に生まれたヤツが出来ることじゃねぇ…」
アイリスは、思わずそんな言葉が出た。
「だけどなぁ!!」
グイッ!!
アイリスは、力強くコントロールスティックを動かすと。
「こっちだって負ける気ねぇんだよ!!売った喧嘩で負けてたまるかっての!!」
そう言ってアイリスは、ライオットのロングライフルを、接近してくる瑞穂のライオットに向けた。
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「やる気は失せてないか。まぁ予想はしてたけど」
アイリスのライオットが、接近するわたしのライオットにロングライフルを向けてきたのを見て、わたしはそう言った。
『この間合いなら当てられる。ロングライフルの間合いじゃなく、あいつ自身の間合いで来るなら、確実に当てられる』
わたしはそう思った。
そして。
『…あんなヤツだったら…』
…まぁいい…。
「当たってやるつもりはない!!残念だけどね!!」
だから機動力を半減させた。後退されないために。
そしてわたしは、ライオットの右手に持たせてあるライフルを、左手に持ち替えた。
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「ちょっと!!今の!!移動しながら、ライフルを片方の手に持ち替えましたよ!!」
「…おいおい。マジかよ…」
運転席に座る男と、その隣に座る男はそう言った。
「…何する気なんだろ…。…あの人…」
後部座席にいる少女は、瑞穂のライオットの動きを見て、小さくそう言った。
「…ねぇ、レイナ。レイナ?」
隣にいるレイナに、あのライオットの動きについて聞こうと思った少女は、レイナを見ると。
『…やっぱりいつもと違う。いつもなら、はしゃいで騒いでるのに、全然静かだ…。本当にどうしたんだろ?』
唇に指を当てている、レイナのその様子を見て、少女はそう思った。
**************
「んだよ!!それ!!そんな器用なこと!!」
接近しながら、ライフルを右手から左手に持ち替えた、瑞穂のライオットを見て、アイリスはそう言った。
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「伊達に、目的が叶って来なかったわけじゃないのよ!!こっちは!!」
そう言うとわたしは、左手に持ち替えたライフルを、あるところに向けた。
そこは…。
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