第20話 模擬戦⑧

 スー-。ハー-。

 わたしは深呼吸すると、前方のアイリスのライオットを見た。


 そして。


 ギュゥーーーン!!


 ライオットを、一気に前進させた。


  ****************


「ケッ!!馬鹿の一つ覚えかよ!!そんなの、もう通用するかよ!!」


 ギュゥーーン!!


 ズキューーン!!


 そう言うとアイリスは、ライオットを後退させながら、ロングライフルを瑞穂に発射させた。


 後退させながら、攻撃する。そうすればいいだけだ。


   ****************


「そう来るよね。だったら」

 そう言うとわたしは、ライオットを横へ横へと移動させた。


   ****************


「当てられないようにってか?舐めんな!!」


   ****************


『…というようなこと思ってるでしょうね。生憎だけど、それがホントの狙いじゃない』


 さて、始めるか。


 ギュゥーーーン!!


 わたしは、ライオットを右横に、一気に移動させた。


   ***************


「右から攻めるってか?」


 そう言うとアイリスは、ライオットのロングライフルを、瑞穂のライオットに向けた。


   ***************


「悪いけど、あんたの間合いは大体見抜いた。ロングライフルを使ってるからって、あんた自身の間合いを見抜ければ、そんなに問題じゃない」


 ズキューーン!!


 ドォン!!


 ギュゥーーン!!


 わたしは、アイリスのライオットの攻撃を避けると、そこから左側に移動した。


  ***************


「ちょこまかと!!」


  ***************


『ロングライフルの射程がどれくらいだろうと、あんた自身の間合いが決まってたら、そこが隙になる』


 ズキューーン!!


 ドォン!!


  *****************


「何か動き変わりましたね。あのライオット」

 運転席に座る男は、瑞穂のライオットを見てそう言った。

「ああ。さっきまでとは動きが違う」

 運転席の隣に座る男がそう言うと。

「何か、追い詰めてるって感じがする。アイリスの方が有利に見えるのに」

 後部座席にいる少女は、瑞穂のライオットを見てそう言った。見た感じでは、アイリスが有利だ。なのにどうして。

「……………………」

 レイナは、静かに瑞穂のライオットを見続けていた。

 こんな時にも彼女の姿が、時折、目に映ってしまう。戦いの様子より、レイナの目には彼女の姿が目に映ってしまっている。あの少女の姿が。

『…早く終わってくれないかな…。…勝敗なんてどうでもいいから…』

 唇を指で触りながら、レイナはそう思った。


   ***************


「あんたの間合いが狂えば、ロングライフルの命中率も下がる。そうなったら、ロングライフルの射程なんか関係なくなる!!」


 ズキューーン!!


 ドォン!!


 わたしは、アイリスからの攻撃を避けると。


 ドドドドッ!!


 ライオットのライフルを発射させた。


  ****************


「当たるかよ!!射程外だろうが!!」


  ****************


「あんたを狙ったわけじゃないわよ」

 わたしのライオットのライフルが放った場所は。


 ドォン!!


 アイリスのライオットの足元の周辺に、土煙が上がった。わたしの狙った場所はそこだ。


   ***************


「こんなもん、目眩ましになるかっての!!足止めにもなんねぇよ!!」



   ***************


『…ということを、あいつは思ってる。確かに目眩ましにも足止めにもならない』


 だけど。


 ギュゥーーン。


 わたしは、ライオットを、ライフルの射程内まで接近させると。


 ドドドドッ!!


 アイリスのライオットの脚部を攻撃した。正確には、スラスター周辺の部分をだ。



  ****************


「なっ!!」


  ****************


「意外だった?そんなところ狙ってくるなんて。もっとも、さっきの土煙で、そこが見えなくなって、防ぐのとか無理だったでしょうけど」

 わたしは、アイリスのライオットの脚部に、ライフルが命中したのを見てそう言った。わたしはそれが狙いで、地面を攻撃して、土煙を起こしたんだから。

『わたしの動きは、あんたの間合いを狂わせるため。ロングライフルの射程を意識して、自分自身の間合いは意識してなかったみたいだしね。だからそういう隙が作れた』


 だけど。


「ここからが本番よ。言ったでしょう?徹底的にやって、さっさと終わらせるってね!!」


 グッ!!


 わたしは、コントロールスティックを握りしめて、アイリスのライオットに向かってそう言った。








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