第19話 模擬戦⑦

「敵が使ってた武器を装備するなんて。協定違反でしょう!!それ!!戦闘中ならともかく!!」

 わたしは、アイリスのライオットに通信を繋いで、彼女にそう言った。

 戦闘中ならまだいい。わたしだって、それをしてる。だけどこれは違う。明らかに敵が使ってた武器を、そのまま自分の装備として使ってる。あんなの協定違反になる。


 すると。


『うるせぇ!!戦利品だ!!文句あっか!!』

 アイリスは、そう言ってくると。


 ズキューーン!!ズキューーン!!


 ロングライフルを、連続して撃ってきた。


「戦利品ってね!!」


 ドォン!!ドォン!!


 わたしはそう言って、その攻撃を避けると。


 ドドドドッ!!


 ライオットのライフルを、アイリスのライオットに向けて発射した。


  ***************


「当たるっかっての!!」

 そう言うとアイリスは、瑞穂のライオットのライフルの攻撃を避けると、ライオットを少し後ろに退かせた。

 そして。


 ズキューーン!!


 ロングライフルを、再び瑞穂のライオットに向けて発射した。


  ****************


 ドォン!!


「こいつ!!やる!!」

 アイリスのライオットのロングライフルの攻撃を避けたわたしは、思わずそう言った。

『こっちの攻撃を避けて、後ろに下がって、ロングライフルの射程を維持してる。こっちの有効射程に、迂闊に入らないようにしてる』

 あんな荒っぽい口調で喋ってたくせに、わりと冷静な攻撃してる。意外だわ。

『それにちゃんと模擬弾使ってるし。そういうところも、ちゃんとしっかりしてるな』

 まぁ、そうでないと困るけど。

「どっちにしろ、こっちから近づくしかないか」


 ギュゥーーーン!!


 そう言うとわたしは、ライオットを、アイリスのライオットに接近させた。


 ズキューーン!!ズキューーン!!


 わたしは、アイリスのライオットのロングライフルの攻撃を避けながら、彼女のライオットに接近していった。

『下手に攻撃しながら接近したら、あっちの射程距離を維持される』


 だったら!!


「こっちの射程距離に近づくまで、攻撃しない!!」


 ギュゥーーーン!!


 わたしはそう言って、そのままライオットを前進させながら、アイリスのライオットに接近させていった。


   ***************


「こいつ!!」


   ***************


 そしてわたしのライオットのライフルの射程まで近づくと。

「これで!!」

 わたしは、ライオットのライフルを、アイリスのライオットに向けて発射させようとした。


 だけど。


   ***************


「そう簡単に行くかよ!!」


   ***************


 ギュゥーーーン!!


 アイリスのライオットの足のスラスターが、勢いよく吹いて、一気に射程内から離れた。

「えっ?この出力。普通のライオットの出力じゃない!!」

 わたしは、アイリスのライオットの足を映して、拡大した。


『…これって…』


「ライオットの足じゃない!!別のHWMの足だ!!しかもこの足、ウチの軍の機体のヤツじゃない!!」


『…まさか…』


 わたしは、アイリスのライオットの腕を映して、それを拡大した。

 そして。

「腕もだ。ライオットの腕じゃない。別のHWMの腕だ。この腕も、ウチの軍の機体のヤツじゃない」

 このライオット、色々カスタムしてある。だけど、ウチの軍のHWMの機体使ってないってどういうこと?

『もしかして、これも戦利品ってヤツなの?』


 すると。


 ズキューーン!!ズキューーン!!


 アイリスのライオットが攻撃してきた。


 そして。


『へっ!!どうした?それで終わりか?エース様よ!!』

 通信からアイリスが、わたしにそう言ってきた。

「…終わりにしたっていいんだけどね…」

 わたしが、小さくそう呟くと。

『大したことねぇな。やっぱ平和な国に生まれたヤツなんて、その程度ってことかよ』

 アイリスが、わたしにそう言ってきた。


 ズキューーン!!ズキューーン!!


『…平和な国…ね…』


 ドォン!!ドォン!!


 わたしは、アイリスのライオットの攻撃を避けると。


「…平和だからっていっても、それで…」


 すると。


『男にチラホラされて、はべらせて、チャラい男とイチャイチャして遊んでりゃいいんだよ!!お前みたいなヤツは!!』


 ドクンッ!!


『男なんて引く手あまたってヤツか?イケメンしか興味ありませんってか?そうじゃない男なんて興味ない。そんなヤツとは、只のお遊びで付き合ってるだけってか?』


 ドクンッ!!ドクンッ!!


『一体何人、そうやって男捨ててきたんだよ?ええっ!?』


 カッ!!!


『…たくっ。何でそんなヤツが軍に入って、しかもエースなんて呼ばれ…』


「……アイリス……」


『ああっ?』

「…適当にやって、さっさと終わらせようと思ってたけど、気が変わった…」

『んだとぉ?』

「…さっさと終わらせる…。…だけど適当じゃない…」

 グッ!!

 そう言ってわたしは、力強くコントロールスティックを握ると。

「徹底的にやって、さっさと終わらせる。そうしないと気が済まなくなった」

 わたしは、アイリスにそう言い放った。


   ***************


『…何だこいつ。さっきまでと雰囲気が違う…』

 通信から聞こえた瑞穂の声を聞いて、アイリスはそう思った。


 何か怒りを感じる。


 そういえば、あの時もそうだ。あの時もこいつの声には、同じものがあった。


「やってやるわよ!!模擬戦!!やってやるわよ!!!」


 今思うとそうだ。あの時そう言った、こいつの声にも、同じ怒りがあった。


「…何なんだ。こいつ。何なんだ?…」
















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る