第18話 模擬戦⑥

「…まぁいいか…。こうなったら仕方ない…」

 そう言うとわたしは、翻訳機を耳から外して、それをコクピット付近にあるポケットに仕舞っった。


 電話とか、そういう類いの時ならともかく、HWMみたいなコクピットの場合だと、通信機から聞こえる声と、翻訳機から聞こえる声とが混ざり合って、通信が聞きづらくなるからだ。

 通信機にも翻訳機能があるから、翻訳機を耳に付ける必要もない。だからこういう時は、翻訳機は外す。


『それにあのままじゃ、腹の虫が収まらなかった。いいよ。受けて立ってやる』

 スー。ハー。

 わたしは、軽く深呼吸すると。

『…だけどこんな模擬戦なんかに興味ないのは変わりない…。…こんなのさっさと終わらせたい…』

 目的が叶わないような、こんなこと、ホントはしたくない。演習とか訓練とかならともかく。

『制限時間が来るまで、それなりにやったら頭も冷えるだろうし。あっちはどうか分からないけど、わたしはそうさせてもらう』

 それにしても…。

「ちゃんと整備されてるな。わたしのライオット。まだ搬入されたばっかりなのに」

 わたしは、コントロールスティックを握って、軽くライオットを動かしてみた。

「何だか、こうなることを予想してたみたいに、ちゃんとしてある。どうなってるの?」

 わたしは、モニターに映し出した、ライオットの各部のフレーム。センサー類。メインカメラといった、各種の情報を見た。

『どれも問題無し。ここまで万全だと、何か変に疑いたくなる』

 わたしはそう思った。どう考えても、こんな模擬戦、大佐の許可を得たものじゃない。許可を得たなら、あんな物言いするはずないし。

「…いちいち考えたってしょうがない。さてと、次は…」

 そう言うとわたしは、ライフルの情報をモニターに出すと。

「弾数も満タン。ちゃんと模擬弾になってる。まぁ当たり前だけど」

 あっちも、ちゃんと模擬弾でしょうね。何かあのアイリスって子の態度見てると、実弾装備してるんじゃないかって気になってくる。

『…そういうのは勘弁してよ…。…だってこんなので…』


 すると。


 モニターに、演習用ドローンが見えた。


 そしてモニターに、演習開始を告げる文字が映し出された。


『さて、あの子の機体はどこ?』


 すると。


 ズキューーン!!


「いきなり?」


 ドォン!!


 わたしは、その攻撃を躱すと、攻撃してきた場所を拡大した。

『長距離からの攻撃。ということは、ロングライフル。それにしても開始と同時に攻撃してくるなんてね』

 まぁ、ロングライフルを武器にしてるなら当たり前か。そんな装備なら、先手必勝で行くのが当然だろうし。

 そしてわたしは、拡大した映像を見ると、そこにはHWMが映っていた。あれがアイリスの機体か。

『ライオット。でも、わたしの機体とは色が違う』

 しかも。

『何か手足やらが、通常のライオットとは違う。遊撃部隊仕様にされてるとか、そんな感じでもない』

 それに何より。

『あのロングライフル。ウチの軍のヤツじゃない!!あんなロングライフル見たことない!!…いや、アレって、まさか…』

 わたしはコクピットのパネルを操作して、機体に内蔵されているデータをモニターに出した。

 すると。

「やっぱりだ。あのロングライフル。わたしたちと敵対してた軍が使ってたヤツだ。何でそんなの装備してるの!?」

 わたしは、モニターに映し出されたデータを見てそう言った。


   ***************


「こっからだ!!まだまだ始まったばっかだぞ!!エース様よ!!」

 アイリスは、モニターに映っている、瑞穂のライオットを見てそう言った。





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